ユニオン(労働組合)に相談して長時間労働をなくそう!

ユニオン(労働組合)に相談して長時間労働をなくそう!

コミュニティ・ユニオン全国ネットワークが呼びかけて、「ユニオンに相談して長時間労働をなくそう! 長時間労働ホットライン」が2月17~18日に実施された。全国12ヶ所(北海道、東京、神奈川、山梨、長野、愛知、三重、京都、大阪、兵庫、岡山、広島)のユニオンが取り組み、計70件の相談が寄せられた。
最近は様々な団体が様々な電話相談活動に取り組んでいるためなかなか報道されないが、地方によっては地元紙や支局、テレビの地方局などが取材して多くの相談が寄せられることがある。今回も東京や神奈川では全く報道されず、相談もゼロだったが、NHKで報道された三重などでは多くの相談が寄せられた。
ここでは、実施の趣旨を紹介し、どうすれば長時間労働をなくせるのかを、改めて確認したい。【川本】

■三六協定を結ばなければ残業はできない

長時間労働が問題になっている。マスコミ等では、労働委基準法36条で定める、時間外労働に関する協定(三六協定)を結べば、事実上いくらでも残業ができることが問題だと報じられている。しかし、そもそも三六協定を労使が結ばなければ、残業を命じることができない、させれば違法になること自体があまり知られていない。
労働基準法32条は、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはならない」、「1日について8時間を超えて労働させてはならない」と明記。同法36条では、「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届けた場合においては労働基準法32条・・・に関する規定にかかわらず、・・・労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」とされている。
つまり、三六協定の残業時間数ばかりが取りざたされているが、実は、労働基準法36条自体が例外的に残業を認める特別条文であり、条文にある通り労働組合や労働者の代表は非常に大きな責任を持っている。

■三六協定を結んでいない企業が44・8%

厚生労働省の調査(平成25年10月 労働時間等総合実態調査)によると、そもそも三六協定を結んでいない企業が44・8%に上る。もちろん半分近くの企業の残業がゼロならよいのだが、現実的には半分近い企業で、違法な時間外労働が行われていると思われる。実際、上記調査でも、締結していない理由として、「時間外・休日労働がない」とした会社は43%に過ぎず、「存在を知らなかった」という会社が35・2%にも上っている。(注1)

■労働者代表は、どのように選ばれるのか

労働組合の組織率は2割を切っている。過半数を組織するとなるとなおさら。右記の通り、過半数労組がいない場合には、「労働者の過半数を代表する者」を選ぶのだが、具体的にどのように選ぶかについては法的な規定がない。旧労働省が88年に次のような趣旨の通達を出している。
①過半数代表者の適格性
・事業場全体の労働時間等の労働条件の計画・管理に関する権限を有するものなど管理監督者でないこと。
②過半数代表者の選出方法
・使用者の指名などその意向に沿って選出するようなものではあってはならない。
・労働者の投票、挙手等の方法により選出されること

■きちんと選ばれていない労働者代表も多い

実際にきちんと選出している労働者代表は少ないようだ。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査(労使コミュニケーションの実態と意義 平成26年12月)でも、適正な手続きで三六協定を締結している事業場は、過半数労組のある職場を加えてもわずか48・2%に過ぎないことが明らかになった。(注2)

■労働組合に相談すれば長時間労働はなくせる

労働組合がない中で、法的規制もない労働者代表について、会社にきちんと代表を選んでくださいと言うのは容易ではない。会社に煙たがれることもあるだろう。例えば、法的に周知が義務付けられている就業規則ですら、「見せてください」と言うのは勇気がいる。労働組合を個人の力で作ることはもっと大変だ。
そこで、まずは労働組合に相談して過半数労組を結成するか、少なくとも労組に加入して要求しつつ労働者代表に立候補することこそが長時間労働を撲滅する近道。三六協定の残業時間に上限を設けることも重要であるが、何よりも長時間労働をさせない労働組合ないしは労働者代表がいることの方が大切だ。
つまり、労働組合がその気になれば、現行法制度でも長時間労働のかなりの部分はなくせる。実際に過半数を組織していないユニオンでも、組合員が職場に1人でも労使交渉をして長時間労働対策を要求したり、社長が勝手に指名していた労働者代表ではなく、きちんと無記名投票選挙を行わせて組合員が労働者代表に選出されたこともある。それを快く思わない社長が、働いていない役員まで労働者数に加えたようなひどい例もある。

■仲間の協力が重要

センターにはメンタル不調(精神疾患)の相談が多く寄せられる。労災請求においては長時間労働等の証明が重要である。客観的に記録することが法的に義務付けられておらず、残業が自己申告制のような職場も多い。やはり協力してくれる仲間が重要になる。ここでも労働組合と一緒に職場の仲間を増やすことが労災認定の近道となる。職場で孤立していても被災者と同業他社の仲間が労働組合にいるかもしれない。残業代未払いについても、労働基準監督署に申告すれば是正勧告が出されて支払われこともあるが、同僚の協力があるかないかでは大違いだろう。