原発被ばく労働による白血病で労災認定されたAさん 東京電力を相手に損害賠償を求めて提訴

原発被ばく労働による白血病で労災認定されたAさん
東京電力を相手に損害賠償を求めて提訴
16年11月23日、東京都内で「国・東電は労災の責任をとれ! 健康被害への補償を行え! 福島第一での被曝労災に対する損害賠償を求める集会」が、当センターも参加する「被ばく労働を考えるネットワーク」の主催で開催された。【川本】

集会前日の22日には、15年8月に白血病で労災認定されたAさんが、東京電力を相手取る損害賠償裁判を提訴。集会には、代理人である海渡雄一弁護士が参加し講演した。また、東京労働安全衛生センターの飯田勝泰さんが、全国安全センターが実施してきた5年間にわたる福島第一原発の労働問題に関する厚生労働省などとの交渉の報告を行った。
Aさんの裁判は、福島第一原発の収束作業が原因で労災認定された労働者が起こした初の民事損害賠償裁判である。さらに言えば、原発被ばく労働による白血病で労災認定された労働者の初の裁判でもある。一般的な労災損害賠償裁判では、因果関係はもちろんのこと、会社の過失や責任を立証する必要がある。原発労災については、「原子力損害の賠償に関する法律」(原賠法)に基づいて、因果関係のみが認められれば、原子力事業者、Aさんの場合は東京電力が全ての賠償をしなければならないことになる。そういう意味では、労災認定されているから早期解決が可能と思われがちだが、そうではない。
かつてセンターも支援した長尾労災裁判では、東京電力が、労災認定にもかかわらず因果関係を否定。あろうことか国もそれを支援し、残念ながら最高裁まで闘ったが敗訴した。行政上の因果関係の決定と、裁判所の判断が異なることがあるのだ。ただし、長尾さんの病気は多発性骨髄腫で、因果関係の立証が難しかったことは事実。東電は、そもそも放射線被ばくと多発性骨髄腫の因果関係そのものを否定し、裁判所もそれを追認した。
Aさんの場合は白血病で、さすがに放射線との因果関係を全否定することはなかろう。しかしながら労災認定した厚生労働省ですら「科学的因果関係を認めたものではない」などというコメントをわざわざ発表するくらいなので、油断はできない。海渡弁護士も、集会参加者に、「東電に対し、無用な争いをするなという運動を進めてほしい」と訴えた。「被ばく労働を考えるネットワーク」を中心に、「福島原発労災損害賠償裁判を支える会」(あらかぶさんを支える会)も正式に発足し、東電への申し入れも予定されている。
Aさんの裁判の第1回口頭弁論は、2月2日(木)午前10時から東京地裁615号法廷にて。多くの皆さんの注目と支援をお願いしたい。