職業病被災者の職場復帰や損害賠償について

職業病被災者の職場復帰や損害賠償について
昨年末、労災治療中の被災者の損害賠償交渉が相次いで妥結した。2件とも対外的に公開しないことが和解条件だったので、社名や具体的金額などは紹介しないが、労災職業病被災者にとって、そして労働組合としても大きな課題である職場復帰と損害賠償という視点から報告する。【よこはまシティユニオン】

■Aさんの事例

Aさんは、3ヶ月更新を繰り返す契約社員として、コンピューター作業等に従事していた。働いて1年ぐらい経過した頃に頸肩腕障害を発症。労災職業病センターに相談して労災認定され、治療を続けながら働いていた。ところが会社が職場改善を進めなかったために症状が悪化し、休業を余儀なくされる。雇い止め解雇されそうになったが、労災職業病センターのアドバイスもあって、なんとかそれは免れた。その後は、1ヶ月更新を繰り返してきた。
その後、Aさんはよこはまシティユニオンに加入し、損害賠償や職場改善を求めて会社と交渉を始めた。会社は、「Aさんが会社の指定医の診断を受けないと回答しない」という不誠実な対応であった。結局、昨年秋に、会社が雇い止めと合わせて労災職業病問題全体の解決を提案。粘り強い交渉の結果、妥結に至った。
Aさんは、交渉中から週1回程度のアルバイトを始めており、社会復帰を目指している。

■Bさんの事例

Bさんは、小さな会社で働いていたが脳出血で倒れた。健康保険で治療を続けていたところ、会社から退職勧奨を受けた。 よこはまシティユニオンに加入し、雇用問題や残業未払いについて団体交渉をした。残業代未払いについては、会社と話し合いで解決したが、労政請求中に解雇された。治療を続けながら復帰できるような労働条件が確保できる保障がなかったので、他の職場に障害者枠で働くことにした。
その後労災認定されたので、損害賠償についての交渉を行う事にした。会社は小さな会社でお金がないということだったが、粘り強い交渉の結果、納得できる回答を得たので解決する事にした。

■社会復帰は重要

Aさんの場合も、Bさんの場合も、正直言って元の職場に戻ることは非常に難しかった。それは2人の症状や障害が重いこともあるが、会社自体に職場改善の志向性や能力がないことが大きい。それを変えていくのが労働運動の役割であるが、現実的には2人とも、会社側代理人弁護士がなんとか会社を説得して解決に至る道筋を作るのが精一杯だったと思われる。
にもかかわらず、AさんもBさんも自分で復帰する職場を見つけて、社会復帰の努力をしてきた。社会復帰そのものも大切だが、なかなか展望が見えない長期にわたる交渉は、そうした被災者の努力があって可能になった。

■損害賠償金の額

当たり前のことだが、労災職業病の損害賠償額は高い方がよい。一方で、長期にわたる裁判よりも、話し合いで早期に解決できた方が良い。最後は本人の納得であるが、ほとんどの被災者は、「世間的に妥当ならいいです」と言う。AさんもBさんもそうであった。ただ、世間的に妥当かどうかは、なかなか判断できない。
そもそも非正規雇用だったAさんの賃金は非常に低く、毎日働いていたにもかかわらず労災給付の最低限度額を下回る額だった。Bさんの主な症状は神経症状なので、症状固定で障害等級を決められるとすると、適正に評価されるかどうか微妙である。こうした場合、裁判などで請求できる金額が、そもそも妥当かどうかという課題がある。
今回の解決について、お2人とも納得してくださっていることは本当によかったと思う。