Fさん逆転で公務上認定

小田原城北工業高校の教師であるFさんは、2012年11月3日、体育館でバレーボール部の指導中、スパイクの見本を見せるため右足を強く踏み込んだところ、右膝がガクッと折れるような感覚を覚えた。被災直後はそれほど痛くはなかったが、夜になっても膝が張ったような感覚があり、曲げ伸ばしがしづらく痛みを感じた。翌々日になっても症状が改善されなかったため、同月5日に近医の2つの整形外科を受診。その後、小田原市立病院に転医し、右膝前十字靭帯損傷・半月板損傷と診断された。公務災害だと思ったFさんは、12月17日付で地方公務災害基金神奈川県支部に請求したところ、翌年1月30日付で、右膝前十字靭帯損傷については公務外の認定を受けた(半月板損傷は公務上)。
公務外の理由は、地方公務災害基金が「前十字靭帯が新鮮例として断裂した時は数十ccの出血などの外傷変改が出るのが普通だが、本件は間接血腫も膝の膨張もなく、新鮮例の断裂としては説明できない。・・・術中に前十字靭帯の断裂が確認されたのであれば、それは陳旧性のものであろう」とする支部相談医の意見を採用したためである。

Fさんは、この理由は事実無根だと感じた。なぜなら、小田原市立病院のH医師から術後に「断裂はしていませんでしたが、いわゆる伸びきった状態でした」と説明を受けていたからである。Fさんは即座にH医師と会い、「前十字靭帯は完全に断裂していた」と書かれた手術記録が記載ミスであることを確認し、「繊維は残存するものの高度の緩みを認めた」とするH医師の訂正意見書を支部審査会に提出した。2014年9月19日に行われた同支部審査会の公開審査でも、「完全断裂したわけはないので、出血も少なく、動けないほどの激痛はなかった」と、当時の症状について詳しく説明した。
支部審査会は、新たに第三者医師の意見を求めた。同医師は、関節鏡画像などを確認し「靭帯の一部が断裂しているものの残存部分がある」との所見を示した。靭帯損傷の時期についても「右膝関節の大腿骨下部の関節面の軟骨はそれほど傷んでいないことを理由として靭帯の損傷は比較的新しいものと推測」との見解に基づき、支部審査会は、公務外決定を取り消す裁決を下した。

当初、高教組の園部委員長(当時)から相談を受けた時、「医師の診断ミスを訂正させて不認定を取り消させた事例もありますよ」とアドバイスしたが、何よりもFさん本人が医師の「記載ミス」を見逃さず、訂正させたことが、本件を認定に導いた大きな勝因と言えるだろう。学校現場で部活に伴う教員の事故が増えている今日、最後まであきらめなかったFさんの取り組みは、現場の教師たちに大きな勇気を与えるだろう。