外国人技能実習制度(安全センター情報)

飯田勝泰(東京労働安全衛生センター事務局長)

安倍内閣は、2014年4月4日、「建設分野における外国人材の活用にかかる緊急措置」を関係閣僚会議で決定した。国土交通省が中心となってまとめられたもので、中長期的な観点からの対策とは別に、オリンピックの成功に万全を期するための即戦力として外国人技能実習制度を活用することを提案している。大会終了後の2020年度以降には帰国してもらうという、実にご都合主義的なもの。
そもそも技能実習制度は、1993年の創設以来、様々な問題が指摘されてきた。受け入れ企業による労働法令違反、不正行為、人権侵害が横行している。米国国務省の人身売買報告書や、国連自由権規約委員会などから、再三再四、日本政府に是正が求められてきたのである。
建設分野では、技能実習全体の約7%で、それほど多くないのが実情だ。言うまでもなく建設業では労働災害が多発しており、十分な対策や教育がなされないままで技能実習生を入れれば、労災や職業病のリスクが高まることは容易に推測される。
移住労働者や外国人技能実習生の権利問題に取り組むNGOや建設産業の労働組合からは、反対の声があげられた。そもそも外国人労働者受け入れと、開発途上国への技術移転を目的とする技能実習制度は全く別の制度である。制度そのものが人身売買や奴隷労働の温床との疑念が指摘されていることを無視した緊急措置は大きな誤りである。全建総連も、建設労働者が、一人前になるには5年から10年はかかる、国内若年者確保が先決であり、言葉が通じにくい労働者の就労は安全面で大きな問題があると指摘する。
6月24日に閣議決定された「日本再興戦略2014改訂」は、「外国人材の活用」をあげ、技能実習制度を拡充して、建設業と造船業に従事する技能者の就労を円滑化するための緊急措置を整備するという。技能実習生の対象職種をさらに増やしていこうというのだ。
政府のまやかしの外国人材活用戦略に対抗し、多民族、多文化共生社会をめざす外国人労働者政策を早急に提案することが問われている。