公務災害基金本部と交渉 公務災害認定に真面目に取り組め!

8月1日、吉川政重衆議院議員の紹介で、地方公務員災害補償基金本部と交渉を行った。基金本部側は、総務省補償課の広瀬次長ら3名が出席。こちら側は、中皮腫・じん肺アスベストセンターの名取所長と斎藤さん、尼崎労働安全衛生センターの飯田さん、兵庫労働安全センターの西山さん、それにセンターの西田が出席した。【西田】

●石綿関連事案について
まず、資料提供された石綿関連事案の処理件数データを見て、教員(教諭)や消防が1件も認定されていないことに驚いた。「教諭」の申請件数(平18~23年度)は中皮腫12、肺がん1だが、認定0。「消防」の申請件数も中皮腫7、肺がん2だが、認定0だ。ちなみに、「水道事業」は中皮腫17件中13件、肺がん7件中2件が認定されており、「その他の職種」は中皮腫8件、石綿肺2件が認定されている。
名取所長が、アスベストセンターが相談を受けている北海道の教員の中皮腫案件について、申請後3年経っても決定が出ていないことを厳しく追及した。これに対し広瀬次長は、「個別事案なので答えられない」「北海道の基金支部から上がってくるのが遅れたため」と答えた。石綿と精神障害については全事案が支部から基金本部に上げられることになっており、本部の責任ある部署の者が個別事案であれ答えられないはずはない。飯田さんも、「消防職員の認定事例がないのはおかしい。一体どういう基準で判断しているのか」と詰め寄ったが、誰も答えられない。要するに、基金本部は、教員や消防職員の石綿曝露の事実を踏まえていないと推測された。

●精神障害事案について
私たちは、昨年12月に改正された厚生労働省の認定基準に準じて、公務災害の認定基準も改正するよう要求したが、昨年3月に新基準(「業務分析表」)を作り直したばかりなので運用状況を見ながら検討していきたいという回答だった。いかにも遅い対応だ。
また、学校や地方自治体では民間以上にパワーハラスメントが多いので、専門家(医師や厚生労働省職員のように法的に守秘義務のある者)を臨時雇用するなどして被災職員の聴き取りに対応するよう要求したが、「なるほどと思うので労災や国公災を勉強しながら検討していきたい」と回答。学校現場の深刻ないじめ実態を踏まえた真面目な検討とは到底思われない。

●人事体制について
現行の人事体制では、基金支部の担当者は、素人同然の職員が2~3年ごとに変わる。このような「あて職」ではなく、専門職を配置するよう要求したが、「変えるつもりはない」という回答だった。無責任極まる発言と言えよう。

●その他
基金本部は、専門医の名簿公開を拒んでいる。以前、被災者から直接、専門医に苦情が寄せられるなどトラブルがあったからだという。これは、委嘱時に名簿公開を承諾させなかった基金本部の責任と言える。
一方、西山さんが、兵庫県知事が、明石市職員の中皮腫事案について、基金支部長でありながら因果関係が低いと公言した問題を追及すると、「特に問題ないと考える」と回答。こういう無責任な態度には全く腹が立つ。公務災害に係る内外のトラブルに一切関知しないという基金本部の態度こそ問われているだろう。
川崎の給食調理員が指曲がり症で障害等級6級を勝ち取った事案については「承知していない」という回答だった。呆れて物が言えなかった。
また、吉川議員が、基金審査会の議事録がないことを指摘し、検討してもらうことになった。
結局、一事が万事この調子で、抜本対策として公務災害基金制度の廃止、労災保険制度への編入等と唱えてみたくなったが、安易に制度改廃と言う前に、粘り強く事例を積み重ねて制度の改善を図ることが必要だと思う。