静岡県浜松市で初のアスベスト被害相談会を開催

静岡県浜松市で初のアスベスト被害相談会を開催
成田博厚(名古屋労災職業病研究会)
●定年退職後の再雇用で働く中皮腫患者の労災給付額の問題も明るみに

10月29日に「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」としては初めて、浜松市でアスベスト被害相談会・ホットラインを浜松科学館【左写真】で行い、15人もの相談者が相談に訪れた他、相談会前日までに13件の電話相談を受けました。

今回の相談会には、昔、石綿を吸い込む環境におり、健康診断で胸膜プラークを指摘され不安になり来場された方々の他、4人の中皮腫の患者とそのご家族や1人の中皮腫患者のご遺族も相談に訪れました。相談員は、神奈川支部の鈴木さん、関西支部の酒井さん、東海支部の筆者が務めました。
胸膜中皮腫で療養中の男性は、お連れ合いと娘さんと共に会場を訪れました。40年以上、電気工事会社で現場監督等の仕事に従事し、13年10月に定年退職した後も正社員だった頃より低い給料で同じ会社に再雇用され働いていました。今年1月に中皮腫を発症し、9月に労災認定されたものの、再雇用後の低い平均賃金に基づいて労災保険の休業補償の支給額が決定されてしまいました。男性は、「正社員だった頃は、吹付け石綿のある現場等で作業をしなければならない時もあり石綿にばく露する機会がありましたが、再雇用後は事務所での仕事が主になり、点検の為に立ち入る現場も新築物件ばかりで石綿にばく露する機会が無かったにも関わらず、正社員時代の平均賃金でなく、再雇用後の低い平均賃金に基づいて労災の休業補償の支給額が決められるのは納得出来ない」と考えているということでした。
労働保険審査会は今年7月、石綿製品の製造を過去にしていた工場を定年退職した男性が、同じ工場で契約社員として働いていた13年に中皮腫を発症した事案における労災の休業補償支給額を、石綿にばく露していた正社員時代の平均賃金に基づいて決定するよう命じる裁決をしました。
この裁決があったので、後日、男性の労災認定をした名古屋西労働監督署を筆者が訪れ、男性の正社員時代の平均賃金に基づいて労災の休業補償の支給をするよう求めましたが、副所長からは、「本人の正社員時代と再雇用後の仕事の内容が同じという聴取書があるので決定を取り消すことは出来ない。審査請求をして欲しい」という回答しか得ることが出来ませんでした。愛知労働局にも同じ要請をしましたが、労働局の監察官の回答は労働基準監督署と同じでしたので、男性の申し立て書や代理人意見書等を作成し12月中旬に審査請求をしました。
同じようなケースが岐阜県でもあり、今後は、国会議員を通じて厚生労働本省にも働きかけを行いたいと考えています。