小宮玲子・弁護士(神奈川総合法律事務所)

移動中は資料を読むこともままならぬことが多く、もっぱらラジオニュースを聴いています。あるルポライターの方が「自分の仕事は、人の痛み、苦しみを可視化すること」と話すのを聴き、弁護士の仕事にも通ずるところがあるのではと思いました。
センターさんとご一緒した最初の事案は、2001年、タクシー運転手Hさんの労災事故でした。一日5万円の営収指導は所定勤務内では達成できず、「累進歩合制」による長時間労働から脳梗塞を発症。片側麻痺と高次脳機能障害を残すお身体で、ご家族の支え、労働組合の協力もあって会社から損害賠償を勝ち取りました。
Kさんは、大手家電メーカーとの「業務委託契約」に基づき、「サブカスタマエンジニア」(補助得意先技術者)と呼ばれる訪問修理・メンテナンス業務に従事していましたが、顧客への迅速な対応の名のもと担当地域に24時間拘束され、過労により脳内出血を発症、重度の片側麻痺と失語症の障害が残りました。労基署はKさんの労働者性は認めたものの、残された作業日報等から積算した結果、長時間労働には至らないと不支給の決定。当時まだ幼稚園の娘さんを抱えながら気丈にも取消訴訟を決意したご家族と共に、被災から8年後、地裁で勝利判決を得、会社との間でも損害賠償の示談が成立しました。しかしその後、Kさんは障害から快復されないまま入院先で亡くなられました。
現在は、勤務先での転倒、外傷を契機に難病指定である頸椎後縦靱帯骨化症を発症したSさんの労災不支給の取消訴訟を係争中ですが、悔しくも地裁・高裁では棄却判決を受け、上告及び上告受理申立をした所です。
労災事故においては、傷病による痛み、苦しみ、生活上の不安等が甚大であることはもちろん、そのことに関する労基署や裁判所の無理解によって、当事者の苦しみ、ストレスは増大していきます。代理人としては、当事者の痛み、苦しみに共感するだけでは足りず、第三者も理解できるよう可視化した上で粘り強く働きかけ、不当な結論を変えさせる必要があるのですが、困難事案での険しい道のりにおいてもセンターは常に頼もしく心強い同行者、伴走者であってくれます。依頼者との打合せで「一緒にがんばろう!」と再確認しながら、励まされているのは自分自身なのではと思うこともしばしば。センターと共に、被災者とご家族を中心としたチームとして闘えることの有難さを実感します。
他人の痛みや苦しみに無自覚、不寛容になりがちな時代においてこそ、労働者と支援者をつなぐセンターの役割・意義が一層強く求められていると思います。