止まらないアスベスト被害と今後の交渉課題について(エーアンドエーマテリアル)

エーアンドエーマテリアル(A&AM)は、旧朝日石綿と旧浅野スレート等の合併会社で、各社の歴史はニチアスよりは新しいが、それでも大正時代に創立された古い会社である。アスベスト被害の広がりが社会問題となった05年のいわゆるクボタショックの年に初めて、石綿肺の被災者が相談に来られた。その後結成されたアスベストユニオンの副委員長にもなられたOさんだ。
この時、3人の被害者の交渉がマスコミに取り上げられたことや、組合の要求で会社に全ての全国紙に「アスベスト健康診断」の呼びかけを行わせたことなどもあって、06~07年の間だけでも10人を越える被害者と遺族の相談が相次いだ。さらに、患者と家族の会の活動や、アスベストユニオンの結成などもあり、相談体制が強化される中で、14年の現在まで、24人(石綿肺8、肺がん4、中皮腫7、プラーク5)の被害者及び遺族の補償交渉を行ってきた。
ユニオンに加入して会社と交渉し、謝罪と補償を獲得した人はこれまでに20名。現在交渉中の組合員が3名である。会社全体で労災認定被害者は、3年前の時点で100名を越えていた。これだけの被害者がいて、しかもユニオンとも20名の組合員との協定書が締結されていても、いまだ会社には正式な補償制度というものがない。つまり、労災認定されて、会社がそれを知っていても、本人及び遺族が要求しない限り会社は1円の補償もしないのだ。ユニオンとの交渉の中で、会社は「補償内規」というものを提案してきたことがあるが、極めて低額の補償(協定書水準の約半額)だったため話にならない。また、会社は3年前からホームページでのアスベスト被害の報告を削除している。そのため現在の労災認定者、プラークや健康手帳取得者の数が分からなくなっている。団体交渉でも明らかにしようとしない。会社の狙いは、アスベスト加害企業のイメージを早くぬぐいたい、できればこれ以上被害者からの補償要求が増えないようにしたいというもので、加害企業の全く身勝手な考えだ。そうはいかせない。被害者がいる限り、共に会社の責任をこれからも追及していく。
私たちは、今回の交渉で、中皮腫やじん肺管理区分4の被害者で療養中の場合の補償金額を1400万から1600万に上積みさせる成果を上げた。これまでのじん肺訴訟の判決水準をみれば、あまりにも低い。不十分な点は今後の交渉で改善させたい。さらに、今回中皮腫で亡くなられたTさんは、06年の第一次交渉団ではプラークでの補償を求めて交渉した組合員である。会社は、プラークに対しては補償を拒否し続けている。しかし、Tさんのようにプラークのある被災者は、いつ中皮腫などが発症するか、高いリスクと不安の中にいるわけで、プラークを補償対象にするよう更に交渉を進めていくつもりだ。