国労におけるアスベスト問題と課題

2月8日、東京新橋の国鉄会館会議室において、国労本部主催で、アスベスト対策全国工場車両所等合同代表者会議が開かれた。筆者は講師として招かれ、「国労におけるアスベスト問題と課題」について講演し、今後のネットワークのあり方等について議論した。国労がアスベスト問題だけで全国の職能別会議を開くのは初めて。会議参加者は、全国の工場や車両所(貨物)の職場代表、上部機関代表など計40名だった。【池田】

残存するアスベスト
厚生労働省は、平成18年9月1日以降もJR西日本がアスベスト含有製品を使用していたという事案を受け、同様の問題があるか確認するため全国203の鉄道事業者の実態把握を行った。そして、32の鉄道事業者でアスベスト含有製品を新たに使用していたことが判明したと公表した(平成19年5月25日付の報道発表資料より)。
また、厚労省はホームページで、「石綿作業に従事したかも」と心配する人に対して、アスベストを吸った可能性のある作業として「鉄道車両の製造・整備・修理・解体」や「鉄道の運行に関わる作業」を挙げ、写真と共に紹介している。
最近では平成25年6月に「鉄道車両に使われていたアスベスト含有部品等の取扱いにご留意ください」というチラシで、具体的な部分・部品名を明記し注意喚起している。
これらの作業は鉄道関係作業のほんの一部であり、様々な場所でアスベストは使われてきた。いまだ車両や建物の中に残されている可能性は十分にある。今後きちんと対処していく必要がある。アスベストを吸入して数十年後に肺がんや中皮腫を発症するため、工作(工場)関係の作業等に携わっていれば特に敏感にならざるお得ない問題である。

民営化のスキマ
労災制度では原則、最後にアスベストに曝露した職場(最終粉じん職場)を特定する。そこがJRであれば、労災補償として所轄の労働基準監督署が窓口となる。旧国鉄であれば、鉄道運輸機構が申請窓口となる。
ところが、年2回無料健診が受けられる制度の石綿による「健康管理手帳」の申請となると、手続きは複雑だ。JRと鉄道運輸機構は、平成19年3月9日付「有害業務従事証明の取り扱いにおける確認書」で「年月が長い方が費用負担する」とした。JRは石綿曝露歴の実態を精査せず、証明をださず、勤務年月の長さなどで運輸機構(旧国鉄)に費用負担させているのが実情だ。このことは手続きを混乱させている。
手帳の費用負担は機構(旧国鉄)であっても、病気発症時は監督署(労災申請)が窓口になる対象者がいる。しかし、上記のことから労災認定件数が少ないのではないか。運輸機構の認定者数404名(ホームページより、平成26年1月1日現在)に対して、労災はたった5件(「旧国鉄・JRのアスベスト被害の現状と今後の補償・救済に向けた取り組み」(財)国鉄労働会館発行より)。また、この10年ほど労災認定事案がないのも不思議だ。

労働組合のネットワークに期待
現在、国労内において、神奈川は大船工場退職者を中心に、また国労東日本工作協議会の協力のもと各工場や車両所(貨物)の職場の退職者についてのアスベスト被害の掘り起こしと石綿健康管理手帳取得の取り組みを行っている。手帳取得を通じてアスベスト作業実態が明らかになり、同僚の聞き取りなどから未だにアスベストが残されている車両や機関車が存在していることがわかってきた。
厚労省は、平成26年9月24日付の通達で、平成18年の通達を一部改正し、労働局の担当は、「申請者から書類が出されても双方(JR・機構共に)の事業場において有害業務があったか確認をする」ことになった。これも今回の取り組みを進め、ことある度に厚労省に実態をぶつけたことによる。
この通達改正以降、こちらが把握している限りではJRでの負担(要するに労災扱い)で手帳交付された取得者が出てきたこと、また運輸機構の費用負担であっても「職歴」の部分でJR時代の石綿曝露歴も記入されるようになった。ただし手続きの混乱は未だ解消されておらず、JRからの事業主証明が出ないことが多いので、ここは運動を広げていく必要がある。
今後の課題として
筆者の講演後、国労本部小池業務部長から、鉄道運輸機構交渉の経過と、各職能別協議会の運動紹介、全国連絡会についての提案がされた。鉄道も古くからアスベストが使われ、とりわけ工場は大量に扱ってきている。いつまで使われていたか、どの職場にどんな作業があったかなど実態について、組合として記録しておくことは、旧国鉄とJRにまたがった労働者に対する責任をはっきりさせるためにも必要である。
手帳についてはこれからの健康管理であるが、病気が発症した場合、責任問題でムダに時間を費やす暇はない。そのためにも当時の同僚、作業等を残しておく必要がある。
国労内において各職能の中央連絡会、職能別協議会でJR各社に対する交渉を押し上げる取り組みに加えて、全国的な安全問題の検証や要求の討議など政策的な課題も踏まえた交流や取り組みも行われている。しかし、規約上の問題もあり、職能協議会の設置は地方(エリア)などに限られており、全国的には自主財政による連絡会運動となっているとのこと。とりわけアスベストを多量に使っている工作(工場)協議会については全国連絡会は未結成とのことで、今後の検討課題とされた。

講演後の質疑応答で、肺がん療養中の方や、他労組で入院している退職者の方の相談などが寄せられた。たくさん扱っていた職場から運動を広げていけば、間接的に曝露した労働者や協力会社の被害を救うことができる。全国の工作・車両所(貨物)のネットワークを活かし、アスベスト問題に積極的に取り組んでいくことを期待したい。