Iさん脳梗塞で労災認定 残業未払い分も獲得

固定残業は、健康破壊につながる!

Iさんは2013年夏に職場で脳梗塞を発症し、病院に運ばれた。夜中0時から正午前後までの長時間労働が原因である。休業を余儀なくされたIさんは社会復帰に向け懸命にリハビリを行い、1年余が経過した頃、会社(A社、組合と解決時の非開示条項があるため匿名とする)が退職勧奨を行ってきた。Iさんは、仕事が原因ではないかと考えて、センターを訪れた。

Iさんは日常的に12時間近く働いているので、時間外労働があることは間違いない。ところが、残業手当という名目では1円も支払われていない。基本給は15万円だけで、「みなし残業は特別手当に含む」とする文書を渡されて特別手当も定額(4万円)支払われているが、あまりはっきりしない。
こうした固定残業代は、長時間労働を漫然と放置することにつながる。労災請求において、会社の協力の有無は認定がスムーズに進むか否かを左右する。給与規程なども確認してゆく必要がある。一人でも入れる労働組合に入って、会社ときちんと話し合うことを勧めた。

労基署の指導により残業未払いは解決

Iさんは、よこはまシティユニオンに加入し、団体交渉を要求。14年10月下旬、会社の事務部門責任者と代理人弁護士が話し合いに応じることになった。就業規則・給与規程の作成が13年4月なのに、労働基準監督署への提出が14年6月になっていたり、団交で会社側として出席している責任者が36協定の労働者代表だったりすることがわかった。
残業代をきちんと払ってもらう必要があると考えたユニオンの要求を会社は全面的に拒否。労災についても、「可能な限りでは助力は致しますが」としながらも、事業主証明を拒んだ。やむなく交渉は一回で決裂。その足で労働基準監督署に労基法違反を申告、労災請求手続きを行った。
他にも法違反があったのか、どういう指導があったのかは定かではないが、12月になって突然、会社側代理人弁護士から、一定の金額を払うので解決したいという提案があった。労働時間数については必ずしも意見が一致しないし、労働契約はどこまでいってもあいまいであったが、話し合いの結果100万円を支払うことで解決。未払いについての申告は取り下げることにした。

労災認定を勝ち取る!損害賠償請求へ

一方で労災の調査は時間がかかった。ユニオンは、長時間労働は明らかであり、認定基準に照らせば労災になるのは明白なので業務上と認めることを求めた。しかし、会社は、稲葉さんの病気について、「業務に起因するものではないと認識致しております」とし、「労働基準監督署長に対して、当社としての意見を申し出る場合もあります」と回答。本来は休職期間満了となった14年8月で退職扱いにすべきであったとして、15年1月で「当然退職の扱い」、解雇を強行してきた。
やむなくIさんは主治医とも相談しながら、就職活動を本格化して、15年4月に再就職を果たした。そして6月には、横浜南労働基準監督署が業務上決定。
ユニオンは、労働者を使い捨てる会社を許すことはできない。改めて、会社に対して損害賠償請求をしている。【川本】