アスベスト肺がん 住友重機に2750万支払い命じる判決

2月18日、横浜地方裁判所横須賀支部は、住友重機械工業に対し、同社の造船所で働いて石綿肺がんで死亡したHさん(享年73歳)の遺族に2750万円の支払いを命じる判決を言い渡した。ほぼ請求通りの勝利判決であったが、会社は不当にも控訴した。概要を報告する。【アスベストユニオン書記長 川本浩之】

「念書」の解釈と効力が争点

裁判提訴前の交渉でも裁判でも争点ははっきりしていた。Hさんは、じん肺の合併症である続発性気管支炎で療養中に、会社の規程に準じて会社が298万円を支払い、その時に「念書」を提出していた。そこには、「じん肺り患に関する会社の補償義務手続きの一切が完了したことを確認し、今後何らの異議も述べず、また何らの請求をしない」とあった。その後、Hさんは肺がんで死亡し、石綿による肺がんと言うことで労災認定された。

ご遺族がアスベストユニオンに加入し、死亡についての損害賠償請求をしたところ、会社は「念書」を盾にとって、全て解決済みという姿勢であった。そもそも「念書」を提出した時に肺がんで亡くなることなど想定しているはずがないし、当時は、じん肺肺がんは業務上疾病として認められていない。会社の当時の規程では、管理区分2の人は対象となっておらず、当時交渉にあたった、全造船追浜浦賀分会と会社の議論の争点も、管理2のHさんに規程を適用するかどうかであった。

頑なな会社の姿勢

裁判で、会社は、これまでの石綿じん肺訴訟での敗訴を率直に認めようとせず、改めて安全配慮義務違反はないなどと主張してきた。「念書」の問題についても、「こんなのを裁判にすること自体おかしいのだ」(会社側代理人)とまで発言していた。裁判所は、昨年春に和解を勧告し、一定の金額も示したが、会社は完全なゼロ回答。「夢にも思わなかった」(裁判官)かたくなな姿勢に終始したため、判決となった。

「念書」は公序良俗に反する

判決の趣旨は明快である。まず、298万円はあくまでもじん肺に対する障害補償金であり、死亡慰謝料の請求をしないと解釈することはできないとした。さらに、仮にHさんが死亡慰謝料も含めて合意していたとしても、それは極端に低額なものである上に、労働者にとって一方的に不利益であることは明らかで、「合理性は全くなく、容認することは到底できない」、「公序良俗に反するものとして無効というべきである」と断じた。

早期解決に向けて

弁護士さんによると、なかなかここまではっきりと公序良俗違反が認められることは多くないそうだ。こちらの方こそ、こんな問題が「裁判でしか解決しないこと自体おかしい」と言いたいくらいだ。早期解決に向けて注目とご支援をお願いしたい。