労働基準監督署と労働局は相談者側に立った対応を!

退職後に労災申請

 Sさんは、日産横浜の鋳造工場に在職中、じん肺管理3イを受け、職場を配置転換され定年まで勤めた。その後、七年程たってから急にひどいセキ・タンに悩まされるようになり、二〇〇一年七月のじん肺ホットラインに電話。横須賀中央診療所で検査の結果、続発性気管支炎を発症していることが分かった。それで労災申請しようと、最終の管理区分を会社の健康管理センターに問い合わせると、管理2であるとのこと。しかし、休業補償の事業主証明については、「労基署から会社に言ってもらわないと証明できない」と拒否された。そこで私は、労基署から会社を指導してもらおうと、横浜北労働基準監督署の菊地労災第一課長に二〇〇一年一一月二二日に電話した。

労基署職員が暴言

 私が、Sさんの労災申請したいと言うと、菊地課長は、新たにSさんの管理区分申請をしろと言い張った。私は、今まで横須賀労基署で、じん肺など一〇〇件余の労災申請に関与したが、今までそのような対応は一件もなかったので驚いた。じん肺合併症の場合、最終の管理区分が2以上であれば、労基署はそれを確認し、合併症についての調査をすればいいだけだ。なぜ、新たな管理区分申請の必要があるのかと問うと、菊地課長はいきなり語気を荒げて怒り始め、あげくの果てに「管理区分申請を出すのか、出さないのか!」とドスをきかして脅迫してきた。Sさんは最終管理区分2なので、再度の管理区分申請は必要はない、労災申請の書類を持っていくので受理してくれと言うと、なおも菊地課長はブツブツと言い続けた。そして、「労災申請の書類は出されれば受けざるを得ないから、出す分には受け取りますが」と言うので、私は一応電話を置いた。

労働局補償課も間違いを認めず

 電話を切った後しばらく、私は菊池課長の暴言にひどくショックを受けたが、だんだんと頭に来た。そこで、まず管理区分決定を担当する労働局衛生課に電話した。やはり菊池課長の言い分は間違っていると確認。次に、労働局補償課の主任監察官である小山氏に電話した。すると、調べてから折り返し電話をするとのこと。しかし、数日待っても何の連絡もなかったので、こちらから電話を入れた。すると小山氏は、通達にもあるから菊池課長の言うことは間違いではないと言う。私は、そのような通達は聞いたこともなかったので、一一月二八日、労働局に出向いて確認することにした。

 小山氏は、労働局長が各都道府県労働基準局長に宛てた基初第二五〇号「改正じん肺法の施行について」(昭和五三年四月)を出してきた。その第四項「災害補償関係の2「じん肺及び合併症認定の手続き」のを示した。そこには、じん肺管理区分が管理4以外の者からじん肺に関わる労災保険給付の請求があった場合、また管理1や今まで管理区分を受けたことがない者から合併症に係わる労災保険給付の請求があった場合は管理区分申請を行うべきことを指導することとある。しかし、その前のには、以前に管理区分が2や3と決定された者から合併症に係わる労災申請については、当該の最終管理区分決定の根拠になった診断結果等を確認の上、合併症に係わる審査を行い、労災に係わる事務処理を行うことと書かれている。私は、を指摘したが、小山氏は「いや、私が示したの方が本人のためになるんだ」「菊池課長の言っていることは間違っていない」の一点張り。話し合いは平行線に終った。

労基署が謝罪し、労災申請を受理

 その後、厚生労働省本省の職業病認定対策室に問い合わせた。すると、すぐに、今回の署及び局補償課の対応は間違いであり、是正させたとの連絡が入った。

 一一月二九日、労災申請の書類を持って横浜北労基署に出向いた。菊地課長は不在だったが、次長が出てきて「監督署として今回の対応は悪かった、今後は誠実に対応します」と、言った。私たちは、労働局の小山氏についても対策を講じるよう要求したが、現在に至るまでも何の連絡もない。

労基署は相談者側にたった対応を

 私は、労基署の人から脅迫されたのは初めてで、ものすごくショックだった。もしこれが被災者だったら、絶対に労災申請を断念していただろう。センターで把握している限りでも、菊地課長は以前にも労災申請に来た被災者を、労災にならないからと追い返したり(後日、業務上認定された)、港湾の被災労働者の聴取の際に、「入口もあれば出口もある。他署とのバランスもあるから打ち切らないとダメだ」などと暴言を吐いている。またかと残念でならない。相談窓口の対応や言葉使いによってどれほど被災者が傷つき、挙げ句に労災申請を断念することもあることを全く理解していない。菊池課長はもう一度、制度を勉強しなおして相談に臨んで欲しい。また、常に相談する側の立場になって、どの様な対応や話し方をしたらいいか、是非、研修して欲しい。いや、労働局や監督署が責任をもってさせるべきだと思う。