アスベスト肺がん訴訟、不当判決

 現役の国労組合員であった故竹井豊さんの肺がんが労災か否かを争い、遺族が国を相手に16年2月24日に横浜地裁に提訴、18年1月30日に判決を迎えましたが、残念ながら原告敗訴判決となりました。【安元】

●裁判の経過と意義

 竹井豊さんは、旧国鉄大井工場でレジン制輪子(車輌ブレーキ)を削る作業に8年10ヶ月携わり、白石綿にばく露。その後、川崎発電所(旧国鉄・JRに供給するための火力発電所)でボイラー運転手として3年6ヶ月働き、建屋内に積もっていた石綿粉じんにばく露しました。11年8月17日、石綿検診で異常陰影を指摘され、8月26日、JR東京総合病院で肺がんと診断され、闘病の末、12年12月14日に54歳で死亡しました。竹井さんにはプラーク所見がなかったため死後剖検した結果、石綿小体が乾燥肺1gあたり1065本あったので川崎南労働基準監督署に労災申請しましたが、不支給とされました。

 以前、石綿肺がんの労災認定基準は、石綿ばく露歴10年+石綿小体(本数規定なし)でしたが、厚労省はこれを改悪し、石綿小体が5000本ないと業務外とする認定基準にしました。竹井さんはこれにより業務外とされたのです。竹井訴訟は個別救済にとどまらず、認定基準を改めさせることもめざしています。

●口頭弁論と判決

 竹井訴訟は、16年2月24日、遺族が労災の不支給処分の取り消しを求めて提訴、4月14日に行われた第1回目の口頭弁論では、原告である妻の時子さんが意見陳述を行ない、その後8回の弁論が行われ、改悪された認定基準は不適切であること、竹井さんの石綿ばく露は10年以上あり肺がんの発症リスクを2倍以上に高める累積石綿ばく露があったこと、等を主張しました。そして17年10月26日に結審、18年1月30日に判決が出ました。

 判決は、原告敗訴の不当判決でした。横浜地裁は、現在の認定基準を適切であるとし、石綿ばく露作業に10年以上従事しても肺がんの発症リスクは2倍にならないと、原告の主張を否定しました。現在の認定基準は石綿肺がん患者を切り捨てるものです。被災者団体も強く批判しています。今回の不当判決を私たちは認めるわけにはいきません。原告側は控訴し、東京高裁で闘う決意です。私たちも全面的に支援し、勝利判決を勝ち取るまで闘います。