港湾被災者7名に個別聴き取りを実施

 港湾の職業性腰痛症等で療養中の被災者七名に、横浜南労働基準監督署長名で「労災給付にかかる聴取について」という文書(昨年一〇月二七日付)が送られてきた。「労災保険法第四七条に基づき聴取を行いますので下記の日時に来署してください。聴取時間はおおよそ二時間の予定」となっていた。
 署は、これに先立って主治医と面談し、その中で本人に直接話を聞きたいと申し入れ、診療所に出向いてもよいと話していた。今回、主治医や団体に事前の連絡もなく個別に呼び出しの通知を行ったことは約束違反であり、全港湾横浜支部労職会とセンターの代表が一一月一二日に署に出向き、抗議と要請を行った。
 港湾被災者は劣悪な作業環境の下で数十年から長い人では半世紀にわたり港で働き、日本の経済発展を底辺から支えてきた。長年の重筋労働による運動器疾患は非常に頑固で治りにくく、職場復帰の困難さもあり、被災者は長期間の療養を余儀なくされる。症状固定の判断については、従来から「主治医の意見を尊重し、一方的な打ち切りは行わない」ことを確認し、信頼関係を築いてきたものであり、その信頼関係を壊すことのないよう誠意ある対応を求めた。署との話し合いの結果、以下の内容を確認した。
 ●日時など今後の進め方については本人の希望を聞き、団体と話し合う。
 ●場所は港町診療所二階会議室で、時間は三〇分から一時間程度とし、被災者に負担にならないよう効率良く行う。聴取内容は、身体のこと、生活のこと、診療のことの三つで、本人が希望する場合は立ち会いを認める。
 ●適正給付が目的であり、聴取後に再度主治医の意見を聞き、尊重する。
 一一月一六日に行った被災者全体集会では、「突然でびっくりした」「警察の取り調べと同じだ」等、不安や問題点が指摘されたが、今回は全体で行う署交渉は保留とし、個別聴取に応じることにした。
 聴取は月曜の午前中に実施され、一一月三〇日から一月一八日までに全員終了した。
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 Tさん(七六歳)は脊椎管狭窄症で初診は平成三年。一二年と一五年に二回手術したが、現在も右足がしびれて感覚がない。長く歩けないため診療所から駅までの途中で二回建物につかまって休む。毎日通院し温熱療法を行い、週一回の針灸治療、二週に一回の筋肉注射を行っている。投薬は痛み止めや漢方薬も含め最大限処方してもらっている。症状の変動は大きいが、一・二年前より確実に良くなっていると話している。【小】