地方公務員災害補償基金本部と交渉
地方自治体の職員が仕事でけがや病気になった場合、地方公務員災害補償基金の各支部が認定して補償する。ところが、民間の労災補償業務を担う労働基準監督署と異なり、当該自治体の総務課担当職員が、他の仕事と兼任して実務を担うことが多く、非常に問題が多い。その元締めは同基金本部だが、これもまた様々な問題がある。そこで、全国安全センターが本部と交渉を行うことにした。本部は交渉に「不慣れ」で、自治労に「全国安全センターとはどういう団体か」と尋ねたり、「団体交渉はイヤだ」、「(実務を担う)補償課ではなく総務課が対応する」という話もあったようだが、実際に会って話をしてみると、大変有意義であった。今後も継続していきたい。なお、要請・回答項目は多岐にわたったが、ここでは精神疾患とアスベストについてとりあげる。【川本】
精神疾患●申請が少ない
精神疾患の認定状況について、年度別・職種別の件数を求めたところ、統計はとっていないとのことで、手作業で集計して表にまとめたものを提供された。民間同様、職場の状況は年々厳しくなっているが、請求・認定件数ともにあまりに少ない印象を受ける。
ちなみに、全ての請求について本部にあげるよう指示されており、医学専門家が判断する。それは折橋洋一郎(溝口病院)、丸山晋(ルーテル学院大学総合人間学部教授)、黒木宣夫(東邦大学医学部佐倉病院精神医学研究室教授)の3名。
アスベスト疾患●認定が少ない
アスベスト疾患の公務災害の申請、認定状況は表の通り。中皮腫の公務外決定が多い。近年ようやく水道職員が認められるようになったが、教員や消防署員などはほとんど認められず、その他職員を含めても認定率は四分の一程度だ。その理由を尋ねると、「科学的に何か言えるような材料は持っていない。個別案件ごとに理由があると思う」と、一般的回答。
そもそも監督署のように、本人や同僚に、曝露状況について詳細な聴取を行っていないことが多い。「本部からの指示で調査や資料収集をしている」らしいが、研修やマニュアルが絶対必要であることを強く訴えた。厚労省がそういうマニュアル等を作っていることも知らない様子であった。やはり、毎年の問題提起、継続した交渉は重要である。