センターを支える人々:飯田学史(弁護士・横浜はばたき法律事務所)
憤ったので書いておくことにする。女性記者に対する事務次官のセクハラと、これに対する財務省の対応である。
▼前者の真偽についてはこれからも様々な角度で検証がなされるであろうし、その評価についてはカノ財務大臣をしても「事実ならアウト」と言わしめる程なので、改めて論評する必要もない。問題は後者、事件が顕在化した後の財務省の対応である。セクハラ二次被害を防止するという観点からも,報道の自由を支える取材源秘匿の観点からも「被害者は(財務省が顧問契約をしている)弁護士に名乗り出よ」とは悪い冗談にも程がある。しかしながら、これを「悪い冗談」ではなく、本気でやろうとしているところにこの問題の深刻さがあるように思う。
▼私は弁護士なので、「被害者は名乗り出よ」の連絡先として掲げられた財務省顧問弁護士に関心が湧く。このアイディアは果たして顧問弁護士が提案したのか、それとも依頼者(財務省)がアイディアを出して、それを顧問弁護士は受けいれたのか。もし前者ならばセンスがないし、後者ならば依頼者をコントロールすることが出来なかったのかと慮る。いずれにしても、「被害者は名乗り出よ」と言った場合の世間の反応に対する想像力が圧倒的に欠如している。そんなの総スカンくらうに決まっているのだから、財務省という組織を守ることを本気で考えるならば、「いやいや、そんなことをしたら却って大問題になりますよ」という助言がなぜ出来なかったのか。
▼でも、こういう対応をする使用者側の代理人って少なくないのですよね。会社の目先の利益だけを考えて、あるいは経営者の意向だけを忖度して行動する。それが会社の発展にとってプラスになるかどうかの視点なんてまったくない。客足が遠のいた大手居酒屋や人材が確保出来ずに閉店を余儀なくされた牛丼店の事例があるにも関わらず、それに学ばない。
▼そうであるならば、労働者の側で、それはダメだと教えてやらなければならない。労働者(市民)の側でアンテナを張り、想像力を働かせて、ダメな物事に対してキチンとダメだと言っていく。今回の財務省のドタバタ劇を見るにつけ、センターが果たしていくべき役割はますます重要になるのでしょうし、支える人の末席に座る私も頑張らなければと決意を新たにしたのでした。