被ばく労働の実態と労災損害賠償裁判①(あらかぶさん語る会)

被ばく労働の実態とあらかぶ裁判
あらかぶさんと語る会
主催/全造船関東地協労組・よこはまシティユニオン

【川本】今日は、よこはまシティユニオンの第11弾となる脱原発学習会にお集まりいただきありがとうございます。よこはまシティユニオンと全造船関東地協労組は、3・11の後、毎月11日に関内駅や横浜駅でビラ撒きをしてきました。あわせて東京電力にも50回近く要求書を出しています。また、年に1~2回、脱原発学習会を開催してきました。今日は、東京電力と九州電力を相手取って原発被ばく労災損害賠償裁判を提訴したあらかぶさん(仮名、ニックネーム)に詳しい現場の話などを聞こうと企画しました。また、ずっと支援を続けてきた「被ばく労働を考えるネットワーク」で頑張っておられるなすびさん(仮名、ニックネーム)にもお話していただきます。まず、開会挨拶を全造船関東地協労組の青木委員長にお願いします。

【青木】こんにちは。暑い中ご苦労様です。ご紹介いただきました関東地協労組の委員長の青木です。あらかぶさんの裁判は私も何度か傍聴させていただき、本当に東電と九電の主張には反感を覚えました。あらかぶさんの被ばく量は、皆さんも飛行機に乗ったら浴びる放射線の程度なんだというような下りがあり、何を言っているんだろうと呆れたことを覚えています。また、前回の裁判では開廷早々、裁判長が合議すると引っ込みました。何を話したのかというと、大法廷を使うほどの傍聴の人がいないんじゃないかということでした。裁判はまだ続きますので傍聴にもぜひ協力いただければと思います。あらかぶさんは、侠気を出して福島の収束作業に行かれ、相当な線量を浴びたと思います。ところが、東電は、被ばく量はそれほどないから因果関係があるとは言えないと主張しています。それを私たちの力で跳ね返し、このあらかぶ裁判を勝っていかなきゃいけないと思います。今日は懇親会もありますので、お時間のある方は一緒に大いにその後の話もしていただこうと思います。よろしくお願いいたします。

【川本】まず裁判の概要について私の方から解説させてもらいます。その後、なすびさんに、あらかぶさんの紹介と、質問形式で当時の状況などをお話ししてもらいます。

●あらかぶ裁判の概要について
 労災裁判は大きく分けて2つあります。労災認定を求める裁判と、会社に損害賠償を求める裁判です。労災請求をしたけれども、国、労働基準監督署がそれを認めないことがあります。その行政処分の取り消しを求めておこす裁判、つまり労災認定を求める裁判というのが1つ。もう1つは、労災が認められた場合も認められていない場合もありますが、とにかく会社の責任を追及したいという裁判。労災になってお金が出たが、会社がひどい、あるいは全然知らんふりだと。住友重機を相手に横須賀でこの30年来進められてきたアスベストじん肺裁判はそれです。じん肺やアスベスト肺がんや中皮腫で労災認定されたが、会社が全然責任を認めない。そこで責任を問うんだということで、労災プラスアルファの損害賠償請求裁判をやる。大きくはこの2種類あります。あらかぶ裁判は後者です。あらかぶさんは福島で働いて放射線に被ばくしたことが原因で白血病になったと、国、労働基準監督署は認めている。それに加えて、きちんと会社の責任を問う裁判を今やっています。

 実はあらかぶ裁判は、一般の労災の民事損害賠償裁判とは少し違いがあります。普通、労災の場合、会社の責任が無いと、会社に損害賠償請求をしても認められません。確かに労災ですが、会社がきちんとマスクをさせたり安全管理をしていても、有害物質に曝露したら病気になるときはなりますので、労災が起きてしまった場合は、会社が至れり尽くせりやった場合は会社の責任は無いとなり、民事損害賠償請求裁判をしてもダメ。会社はやることはやっているから労災保険が出ているからそれでいいでしょうという裁判結果になることもあり得ます。あるいは、労災で出ている分があるから会社の責任は半分で、本人もタバコ吸っていたからとかで、その分、引かれたらもう労災保険でカバーできているから、会社も悪いかしれないけど労災で十分でしょうとなります。

 ところが、原発被ばく労災は、アスベストや過労死と違い、別の法律があり、原発の関係で被ばくが原因で病気になった場合は、会社に責任があろうがなかろうが、100%補償しなきゃいけないという法律が特別に作られています。原子力を始めるとき、国・政府が、責任がどうだこうだなんて言っていてもその証明がしようが無いと。見えないし臭わないし何もわからないからどのぐらい浴びたかもわからない。とにかく被ばくで病気になったら、責任や過失や喫煙の有無など関係無く、会社、事業所、原子力施設が100%賠償すると。あらかぶさんの場合、被ばく労働したのはほとんど東京電力の原発です。福島第一原発を運営していたのも、事故を起こしたのも東電ですから東京電力が100%賠償します。もちろん労災補償された分はちょっとだけ引きますが、とにかく損害賠償請求すれば100%払うという法律があります。だから、あらかぶ裁判では責任論は問題になりません。東電側が一生懸命に対策をやっていたと主張しても、それは当たり前で、どんなに一生懸命やっていても結果が被ばくによる病気という形で現れれば、お金払えということになります。つまり、唯一最大の争点は原発の被ばくが原因であらかぶさんが白血病になったかどうか。因果関係だけです。普通に考えれば、国の労働基準監督署が労災と認め、因果関係があると認めたのだから、東電はぐちゃぐちゃ言う必要はなく、賠償金を払えばいいだけです。ところがそうしないのが、この間の東電の態度です。

 以前、よこはまシティユニオンの組合員で長尾さんという人が、福島第一原発で70年代半ばに働いて被ばくしたことが原因で多発性骨髄腫を発症し労災認定され、裁判しました。そのときも東電は因果関係が無いと主張し、最高裁まで行って長尾さんは負けました。普通に考えれば、法律に従って東電はすぐにお金を払えばいい。けれども実際は、東電は徹底的に裁判で争う姿勢を取り続けます。お金がかかろうが時間がかかろうが、とにかく徹底的に争うという方針です。それに対し、皆の力で裁判所を説得し納得させる形でやっていきたいなということで一生懸命、支える会とか被ばく労働ネットワークのみなさんと一緒にやってきているというのがこの間の経過です。

 裁判を起こしてからもう2年近く経ちます。9月に第9回口頭弁論が開かれますが、もう2~3回やって証拠調べに入るかどうかみたいな感じです。まだまだ先は長いですが、いろんな書面のやり取りは続いております。弁護士さんをはじめいろんな方の協力を得ながら進められているというのが実態です。

●あらかぶさんの仕事について
 一言で原発で働くといっても本当にいろんな仕事があります。あらかぶさんたちの仕事は、事故前と全く違います。廃炉に向けた事故収束作業、いわば後片付けです。定期検査も含めて、発電所として動いているときの管理とか検査とか部分的修理とかのレベルの話じゃない。燃料がもうぐちゃぐちゃになって、どうなっているかすらわからない、どうしようもない状態なわけです。まず周辺の瓦礫を片付けるところから始まって、放射能を含んだ水が漏れるから大きなタンクをいっぱい作って水を貯めようとか、放射線があるから簡単には近寄れない地域・区域で一般の建設や解体関係の仕事をやります。

 あらかぶさんは原発でずっと働いてきたわけではありません。原発事故が起きて福島や東北は大変だ、自分にできることは何かと思っているところへ地元北九州で旧知の業者からたまたま声をかけられ、じゃあ行こうと。最初、ご家族は賛成されなかったと聞いていますが、とにかくやれることはやろうということで行き、残念ながら病気になったのです。そういう意味で言うと、別に原発に行かなくても、なんぼでも仕事はできるし、他でやれるはずだったけど一生懸命な思いで行ったのです。にも関わらず東京電力は、あらかぶさんが労災になったとき、新聞記者に、うちはコメントする立場にありませんと言った。仮に関係ないと思っていてもお見舞いに来るとか、当社で対応させてもらいますと飛んで来る会社もあるのに、上記のような法律まであって、これだけ大きな事故でみんなに迷惑かけておきながら一言も何も言ってこないのはあんまりじゃないか、冷たすぎるんじゃないかと。そういう思いから、あらかぶさんは今回の裁判に踏み切りました。そういう思いや経過をぜひ皆で共有して、この裁判をきっちり支援しがんばっていきましょう。

 最後に、裁判はお金がかかります。今日は、バッジとTシャツと本も売ってますので、ぜひご購入いただければと思います。カンパ袋も用意しています。ご協力よろしくお願いします。

【あらかぶ】お暑い中、お集まり下さいましてありがとうございます。福島労災損害賠償裁判で、東京電力と九州電力と争っています、あらかぶと言います。福岡、北九州からやってきました。どうぞよろしくお願いします。

【なすび】アシスタントのなすびです。僕はもともと東京の山谷で日雇い労働者とか野宿者の支援活動をやっていましたが、3・11を契機に被ばく労働問題をきちんとやろうということで最初に「自己防衛マニュアル」を作りました。いろんな方にお話を伺って作ったんですが、そこでできたつながりをもとに「被ばく労働を考えるネットワーク」を秋に立ち上げました。あらかぶさんの労災に関しては、僕らが現地で協力していた労働組合にあらかぶさんから連絡があり、取り組みを始めました。労災認定されたが損害賠償もやろうということで立ち上がって下さり、支援して勝ちきりたいということで一緒に裁判闘争をやっています。実は、あらかぶさんは全国各地でお話されていますが、1人で演説するより、掛け合いのようにしたほうがやりやすいということで、ずっとそういう形でやっていますので、今日もそういう形でもやらせて下さい。よろしくお願いします。
最初に、あらかぶさんが福島に行く前にされていた仕事のことを聞かせて下さい。

【あらかぶ】もともと三菱重工の造船所の下請で6年ぐらい、震災の年までしていました。溶接を主にずっとしました。

【なすび】鍛冶屋さん、ですよね?

【あらかぶ】はい、そうです。

【なすび】仕事上は福島に行く必然性は別になかったけれども行かれた、その経緯をお話してもらえますか。

【あらかぶ】11年に東北大震災があって、自分はテレビで津波で流される映像とかを見て、ああ同じ日本の中でこんなひどいことが起こっている。何かできることはないかと思っても、自分も子どもが3人おって、ボランティアで行くにも財力も無いし、九州のどこかなら休みの日でも行けるけどとか日々考えながら、震災後もYouTubeで、子どもさんが浜辺で埋葬される姿とかを見て、自分の子どもがもしそんなんやったらと思ったら息苦しくなって。自分も若いときから、どちらかというとちょっとヤンチャすぎて人に迷惑かけたりとかしてたんで、何か世の中の人のために動いてというか。その気持ちがあったところに、ちょうど知人から、福島で仕事があるけど行ってくれんやろかって言われたけど、やっぱり第一原発が爆発した後で東京電力がいつも嘘ばっかり言うような会見をニュースで見て、そういうその放射能が出ているようなところにはみんなやっぱり行きたくないって言いよったんですけど、自分と同じ考えを持っている同級生とか友だちを誘ったら、お前が行くんやったら俺も行こうかとなって15人位で福島に行きました。

【なすび】その時一緒に行ったメンバーは普段あらかぶさんが仕事をしている会社のメンバーとして行ったのですか。

【あらかぶ】いや、もういろんな職業です。解体屋もおれば大工さんもおるし。自分は鍛冶屋で自分の身内もだいたい鍛冶屋してるんですけど、人間が集まらないで、とりあえずどっかに誰かおらんやろかみたいな感じやったんですけど。自分も同級生も若いときにヤンチャしとる人間ばっかりなんで、みんなで、俺ら東北のために行こうかっていう感じで、15人ぐらい集まって、それで行きました。

【なすび】資料にあらかぶさんの意見陳述書があるのでぜひ読んでください。その中に「義侠心」という言葉がありますが、まさにそういうつもりで福島に仲間とともに行ったということなんですね。結局、行ったときは何次下請の格好になっていた。

【あらかぶ】二次下請です。

【なすび】初めて福島に行って、どんなふうに感じましたか。

【あらかぶ】今なら九州からの高速もずっと太平洋側っちゅうか普通にその東名とか通っ常磐道通っていけるんですけど、その時は全然、高速が、常磐道ともあれだったんで、普通なら1日かけて行けるんですが、北陸回りで1泊2日かけて会社の車3台ぐらいで行ったんです。だんだんいわきのほうに近づいていったら、いろんなところに車がひっくり返っておったり、、海から離れてるのに漁船が道路の横にあったりとか。砂が道路に打ち上がっていたり、道路も段ができておったり液状化みたいな感じになってて。震災から何ヶ月も経ってるのに未だにこんなだなって。すごいことが起こってるなみたいな感じでした。

【なすび】最初に入った福島第二の現場はどうでしたか?

【あらかぶ】第二原発も津波の影響があったみたいで、電源喪失にはなってないんですけど、車が2mぐらい上にひっくり返って引っかかっておったり。たぶん津波に押し流されてと思うんですけど。あとは、原発のステンレスの手すりが全部斜めになっておったりとか。津波の威力はすごいな、みたいな。

【なすび】その現場の様子と仕事の話を映像を見ながらやりましょう。あらかぶさんが福島で最初に現場に入ったのが11年10月17日です。最初、福島第二原発に入って、1号機から3号機の建屋搬入口の津波対策工事。その次が第二原発の4号機の建屋の耐震強化工事、関連工事に入られました。そのあと1度、北九州に戻られて九州電力の玄海原発の定期検査に入られてます。そこでも被ばくされているんで、今回の裁判は東電と九電が相手になっています。そのあとまた福島に戻ってこられ、12年秋から福島第一原発の4号機の工事。5月からは雑固体廃棄物焼却設備建屋。最後に3号機のカバーリング工事に入りました。まず、福島第一原発でどんなことをあらかぶさんがされたかということを紹介したいと思います。

 これは福島第一原発の上から見た地図です。真ん中よりもちょっと下側に原子力発電所の1号機2号機3号機4号機とあって、上のほうに雑固体廃棄物焼却設備があります。この3ヶ所で主に、主にというのはいろんなことをさせられていたので、主要にはこの3ヶ所の仕事になります。

 最初に、福島第一での仕事が4号機のカバーリング工事です。皆さんは、福島第一原発4号機から使用済み燃料を取り出す作業をされたのを憶えておられると思うんですが、一応今は全部取り出されましたが、4号機は定期検査をして止まっていたんだけれども使用済み燃料は入りっぱなしでした。それが危ないということで、それを取り出す作業をやったわけですが、4号機も上の方が壊れていますので、つり上げるクレーンが無いということで、建屋の右側の灰色の構造体を建設して、上にクレーンを作って、クレーンで燃料棒を引き上げて降ろす。で、積み込むための設備を作る。これの一番最初の基礎部分の工事を、あらかぶさんがやられたわけです。

 これは東電の資料ですが、左上が工事を始める前の状態で、下のところはだいぶ整地されていますが、そこにこういう灰色の構造体を建設していくというので、あらかぶさんは、これの一番最初のところで仕事をされていました。これは、あらかぶさんの友人が撮った写真です。ちょうどあらかぶさんが仕事に入ったときはこんな感じでした?

【あらかぶ】これより前と思うけど、だいたいこんな感じです。周りにまだ瓦礫があった状態です。

【なすび】最初の仕事が鉄板の溶接ですか?

【あらかぶ】はい、そうです。750㌧のつり上げ能力があるクレーンが走行できるよう鉄板を敷いてつなぎ目を溶接する作業をしていました。

【なすび】最初に工事を始める時に必要な作業として鉄板を敷いて溶接をされたんですね。普通の現場だったら別にどうってことないことかもしれませんけど、実は当時からもう既にイチエフの地下水はものすごい放射能を帯びていて、地面からの放射線すごかったんです。ですから、鉄板敷くっていうのは、もちろんクレーンのこともありますが、下からの放射線の遮蔽という意味もあったんです。それを溶接する仕事ですから、それ自体が被ばく作業であったわけです。それから、通常の建物みたいに深く掘って基礎を作れないので、ここの部分に地中梁の代わりの土台を溶接して設置したんですが、あらかぶさんはその作業もされました。で、上に建屋を建てて、そこら辺の溶接なんかもやられたんですよね。だから、これが建ち上がって上のほうのは、もうあらかぶさんたちの仕事ではなかった。

【あらかぶ】そうです。ボルト入りぐらいですね。

【なすび】で、このときの元請が竹中工務店です。タイベック着て、全面マスクしてる労働者の写真がありますが、あらかぶさんがされた仕事は、その鉄骨の基礎を作る施工ということで、それからクレーン下の鉄板の溶接、それから建屋エレベーターや非常階段の基礎工事。で、使用済燃料プールの上や下でも作業したと。だから4号機建屋の中でも仕事をした。

【あらかぶ】あ、建屋の中には、4号機は入ってないです。

【なすび】そうか、僕がちょっと勘違い。その時の装備が、タイベック2枚重ねで着て、綿手、それからゴム手2枚、長靴、全面マスク。で、遮蔽ベストがあるときは着用。「あるときは」なんですけど、これはいつもは無かったんですね?

【あらかぶ】そうですね。

【なすび】本来、この現場の作業では、遮蔽ベスト、鉛であったりタングステンだったりの入った遮蔽ベストが使われるべきだと思うんですが、竹中の現場ではそれが十分に無かったと。

【あらかぶ】無かった、はい。

【なすび】この現場で働いていた人が何人ぐらいでしたか。

【あらかぶ】1班、2班、3班とかあったんですけど、それでだいたい1班に40人ぐらいです。

【なすび】で、ベストがどのくらい。

【あらかぶ】まあ、20着あるかないか。

【なすび】半分も無かったということですね。だから半分以上の人はベストしてない。ベストをする人としない人は、何で決まるんですか?

【あらかぶ】こんなこと言ったらちょっと語弊があるかしらんですけど、仕事ができる人っちゅうか動ける人間とか指示する人間とか、身軽な方がいいでしょ。鉛ベストは重さが10㌔以上あると思うんですよ。じゃけ、それを着たらもうほんと、ロボットみたいな動きになるんで。この写真は自分なんですが、見てもらったらわかるように、もう普通にタイベックに煙管服。

【なすび】これは溶接だから、このオレンジの。

【あらかぶ】そうです。

【なすび】これは普通に現場でも?

【あらかぶ】溶接とかするときは着ます。燃えにくい素材になっとるんで。鉛ベスト着てないと本当はダメなんですけど、鉛ベストが無いけえ、自分はこういう状態で仕事しよる時もあったし、余っとるときは鉛ベスト着る時もあったんですけど。半々ぐらいですかね。

【なすび】余ってたら着るっていうふうに、本当だったらみんな着るべきだけれども、ちゃんと用意されていなかったと。

【あらかぶ】そうです。自分らもこういう特殊な現場をあまり意識しないで、全然もう普通の現場みたいな感じで。4号機に入っても、鉛ベストを着ないと仕事が出来ないとかいう教育もあんまり受けてなかった。こっそり着てなかったら大丈夫みたいな感じだったんで。自分もそのときはまさかその放射能で自分がやられるとか思わんので、なるべく身軽で作業して、あまり動かないで作業をする人たちに鉛ベストをなるべく着てもらって、動ける自分らはだいたい着ないほうが作業が進むっちゅうか、そういう感覚で。

【なすび】じゃあ、放射線が危険であるという意識はそれほど高くなかったということ?

【あらかぶ】なかったです。放射線の怖さとかを教育するような、そういう教育も無かったです。

【なすび】初めて放射線作業をする人は6時間の放射線教育を受けなきゃいけないのですが、その中で放射線の危険性という話は無かった?

【あらかぶ】無いですね。東電のA教育、B教育っちゅうのが細部にわたってあるんですけど、それが結局、原子力っちゅうのは素晴らしいエネルギーとか、小さいペレットひとつで石炭何百トン分の換算量があるとか、普通の石油ドラム缶200本ぐらいに換算するけえ、とても素晴らしい未来のエネルギーみたいな感じで教育受けてました。

【なすび】それは放射線教育じゃない。原発PR教育ですね。それでその左上の写真が、あらかぶさんが仕事していたときの、竹中の朝の朝礼か何かですか?

【あらかぶ】そうですね。これ見てもらったらわかるように、これが遮蔽ベストっちゅうか鉛ベスト。こっちは着てないでしょ。これ(写真に写っている作業員)はたぶん絶対自分なんですよね。この前にいる背の高い。

【なすび】また見るからに結構ベストが痛んでますよね。

【あらかぶ】もうボロボロで。自分らが現場に入る前に、瓦礫撤去とかの後の使い古しやけども、チャックのとこにコンクリのカスが詰まっとったりして、もう全然チャックがバカになっていうこときかないで。閉めないといけないけど、どうしようもないんですよ。ガムテープでぐるぐるまきに人に巻いてもらったりとかして着てました。監督だけは一番軽いタングステンの新品。タングステンは一番上等の、タイベックの中にも着れるいいやつ。自分たちは10何㌔ぐらいあるんですよね。だけんもう、タイベックの外に着ないと着れないようなやつで。

【なすび】放射線の計測、労働者の被曝量の計測の話ですが、普通は胸にガラスバッジとアラーム付きのAPDと付けますが、このときの現場ではどうでしたか?

【あらかぶ】このときの現場は、胸に、東電の線量計を1つとガラスバッジですね。それと、もしものときのため竹中の線量計。

【なすび】実は、裁判でも問題になっているんですが、この竹中の現場はとにかくすごい杜撰なんです。線量計は、東電のAPDで、イチエフの中でどこの作業をする人も渡されるものです。それと、元請の竹中が、その東電のAPDが使えなかった時の予備だとか言ってポケット線量計を1個渡しています。それと、毎月集計するガラスバッジ。だから一応3つ付けていた。ガラスバッジは1ヶ月に1度しか計測しないので、日々の被ばく量を見るのは東電のAPDと竹中のポケット線量計です。

 あらかぶさんの線量計の記録を見ると、竹中のポケット線量計のほうがだいたい2~3割高い。東電のAPDのほうが数値が低い。暫定値としては、日々の被ばく量は竹中のポケット線量計の数値を使われる。だけど、最終的な放射線管理手帳に書かれる確定値には、竹中の線量計の数値は除外されて、低い数値で書かれているんです。要するに、ガラスバッジと東電のAPDを比較して高い方を記録した。竹中のポケット線量計は、東電のAPDが使えなかった時の予備であるから確定値の時には使わないという変な言い訳をして、一番高い数値を出している竹中の数字を除外しているんです。それを今、僕らは問題にしているんですけども。あと、遮蔽ベストをしたときに線量計はどこに付けていたかという話をお願いします。

【あらかぶ】胸です。線量計を鉛ベストで遮蔽しとる感じで。本当は鉛ベストの外に付けるんですけど、胸に入れるようになっていたんで、その当時は。だから鉛ベストを着たら本当の数値はたぶん出ないと思うんですね。

【なすび】補足すると、鉛ベストをいつも着られたわけじゃないが、着る時は、通常の線量計の位置の上にベストを着るので線量計が遮蔽されてるんです。見ればわかるけど、ベストが遮蔽するのはここだけで、この辺とか頭とかは別に遮蔽されてないんです。法律上は、こういう遮蔽物を身につけた場合は、遮蔽されてないところと、遮蔽された中と、両方に線量計を付けなきゃいけない。ところが、竹中の現場では全部ベストの下だったので、遮蔽された数字しか残ってない。はっきり言って違法(電離則違反)ですが、東電は、この竹中の現場ではそもそも遮蔽ベストはつけていなかったと主張しています。遮蔽ベストを着けるかどうかはその現場に任されているから我々は知らないと。竹中からは、ここでは使っていないという回答を得ているという言い方をされています。まあ何にしてもむちゃくちゃなんです。

 この写真は、あらかぶさんの仕事の中身の続きで、4号機の格納容器の蓋と圧力容器の蓋です。入ったときはもう蓋は外されてたんですっけ?

【あらかぶ】そうです。

【なすび】12年8月10日に取り外して、これの切断もあらかぶさんがした。

【あらかぶ】はい、自分らでしました。黄色のほうです。

【なすび】あの格納容器のね。

【あらかぶ】はい。

【なすび】当然、この中は炉心ですから線量が高いと思うんですが、この切断の時も同じ格好でやってた?

【あらかぶ】はい、そうです。

【なすび】結構、局所的に線量が高いものなので、本来は手首とかにも線量計をつけて作業するものですが、そういうこともされてなかった?

【あらかぶ】はい。

【なすび】その後、雑固の仕事と3号機の仕事をしたんですよね。今あの3号機は、燃料の取り出しをするために瓦礫の片付けがだいたい終わって、カバーつけて中をいろいろ検査している段階ですよね。そのカバーをつけるとき、一番最初の作業をあらかぶさんがされたわけですね。その時はもう、片付けなきゃいけない瓦礫は残ってなかったですか?。

【あらかぶ】いや、まだ瓦礫とかはあったですよ。夜、自動のクレーンと、遠隔操作できる大きいダンプ、採石場にありそうなああいうダンプが走りよったですね。

【なすび】その建物の足下で作業をしているということ?

【あらかぶ】そうです。

【なすび】ここでの作業は、労基署の資料の中に書かれているのは、鉄筋の除去、瓦礫の片付け、その後の各所鍛冶工事。具体的な鍛冶作業はカルバートアングルの取付。仮設エレベーター設置作業、アンカー打ち。折れたクローラークレーンジブの解体。これは何ですか?

【あらかぶ】鹿島の600㌧クレーンのジブ(腕の部分)が折れたので、そのジブを解体してくれっちゅうことでした。ジブも汚染されとるんで、汚染されとるペンキのところをガスで最初にあぶってサーベイして、後はそのひとつひとつに打ってある基盤ちゅうか刻印も証拠隠滅みたいに全部サンダーで擦って。最初は、補償がきくとか何とか言いよったんですが、外に出して検査しようにも保険屋が来れる状態やないし、汚染されとんで外に出せんけ、結局は、トレーラーに乗せるぐらいの大きさに細切れにしてくれって言われ、汚染された瓦礫とかを捨てる場所に捨てにいくために解体しました。そのクレーンが倒れたことによって道がふさがっとったんですよ。早く道をふさがるのを解除しなくちゃいけないんで、早くクレーンを解体してくれっちゅうことで解体しました。

【なすび】思い出した。これ確か倒れたとき新聞に出たよね。

【あらかぶ】でましたね。新聞も出たし、24時間ネットで写ったやないですか。倒れる瞬間も。みゃーんて曲がってばたんって倒れたんじゃないですね。ジブのちょうどまっすぐ立って、きゅっと曲がっとるでしょ。この部分が折れて。

【なすび】これ自体がすごく放射線量が高いんだよね。それでたぶん運ぶのに、重いっていうだけじゃなくて、1個1個の線量を低くして運ばなきゃいけないんで、小さく切ったっていうのもあるんじゃないかな。

【あらかぶ】そうですね。クレーンのブームに赤白のペンキが塗ってあるじゃないですか。それをあぶったら線量が下がる可能性があるけガスであぶってくれっちゅうて。あぶるんですが、ペンキは剥がれるが、あんまり変わらんちゅう言いよったです。

【なすび】変わらないよね。これはイチエフの構内で?

【あらかぶ】そう、イチエフの構内です。松林みたいなところに、いろんなものを捨てとるんすよ。消防車とか何かの防水車とか、もう汚染されて、水で冷やしよった時の貯めるとこに持ってって、全部固めておったです。

【なすび】東電が敷地内サーベイマップを毎月出してますが、それを見ると、海に近い北側の林の中だけぼこっと線量が高い。瓦礫捨て場です。最初の、高線量瓦礫をみんなそこに捨てていて、そこだけすごく線量が高くなっているんです。

 3号機の工事とほぼ同時期にやっていたのが雑固体の作業です。これは、汚染された可燃物を焼却して捨てるための設備を作るということで、同じような設備は事故前からあったんですが、例えば4号機の下に書いてある、これ、古い雑固設備なんですけども、要するにもうそうなっちゃったら追っつかない、事故後は。労働者が働いて出たタイベックとか、事務棟から持ってきた紙書類とか、処分しなきゃいけないものが山のようにある。それで新たに雑固体の焼却設備を作るということで、その建設の最初のところを、あらかぶさんがやったわけです。そのうちの最初の基礎を作る鉄筋・鉄骨の溶接、加工、組立という作業をした。そのときの装備としては、まあほぼ同じ装備です。ここでも全面マスクだったけども、途中から半面マスクと防護メガネに。そこは線量がそんなに高くない。

【あらかぶ】途中から線量が下がったんで。全面マスクで作業しよったら、汗がマスクの中のあごのところに溜まったり曇ったりして、それで転けたりとか事故が多発してたんで。もうここは線量が低いんで半面マスクで良いっちゅうことで軽装備になったんですね。

【なすび】皆さんは、東電で作業員が原因不明の被ばくをしたのを憶えてませんか? バス待ちのミストで被ばくしたんじゃないかみたいな話がありましたが、実は、それは3号機のすごく線量の高い瓦礫を動かした時に粉塵が舞って汚染された、それが遠く飛んで南相馬の米とかも汚染されたというのが最終的な結論でした。実はその時、あらかぶさんは雑固の仕事を半面マスクでしてたんです。福島第一の環境は、空間線量が他よりも低いからちょっと半面で良いとかいう状況じゃない。ものすごく放射性物質に汚染された場所があって、そこで工事してるわけですから、いつ、そこから放射能が飛んでくるかわからない環境です。東電は一生懸命、敷地の9割以上で今は全面マスクは要りませんと言ってますが、建屋周りは今でもすごく線量高いですし、そこの瓦礫を取り出す作業をやっているわけですから、決して軽装になっていい話じゃないんですが、はからずもその問題が起こったちょうどその時期に、あらかぶさんは半面マスクでそのごく近くで作業されていた。ただ偶然に、粉塵が飛んだその日は作業現場に出てなかった。記録を見る限り。ですが、現場はすごく大変なとこだったということです。

 3号機での仕事をもう少し具体的に話してもらえますか。仮設エレベーターをどっち側に作ったんですっけ? この建屋で言うと。

【あらかぶ】これで見たら、たぶんこの辺やと(図を指さす)

【なすび】なるほど。この仮設エレベーターを作る最初の作業をされた。これは開閉口、出入口ですね。ここから中がもろ見えるから、ここの周りはすごい線量が高い。この辺に這いつくばって作業をやってたという話でしたが、その時は結構ここは危ないっていう意識はありました?

【あらかぶ】中が電気がついてなくて薄暗く、シャッターみたいなのも壊れてて中が見えて、コンクリの何か物体みたいな見えて。ここが搬入口なんで、ここでエレベーターのアンカー打って。でも、もうものの10分ぐらいしか作業できんですね。

【なすび】それは、要するに線量が高いから?

【あらかぶ】はい、そうです。

【なすび】1日の計画線量はどの位に設定されてましたか?

【あらかぶ】基本的には、たぶん0・4ぐらいか。0・8か。

【なすび】たぶん1と考えたときの8割前後?

【あらかぶ】だいたい、はい。

【なすび】設定してるんですね。0・8ミリが1日ね。これは第二の敷地の絵です。第一と違って、南側から1号機2号機3号機4号機となって、海があって、これは東電の資料で、ここがずっと海岸っていうか海との境目です。津波がこう来て、第二原発の場合はこういうふうに水が入ってきて、こっから入ったという話なんですけど。最初のあらかぶさんの、1号機から3号機の水密化工事を具体的に教えてください。第二原発の、事故直後の緊急安全対策のリストの中に、当面必要となる対応策の実施ということで、安全上、重要な設備が設置されている建屋の浸水防止策。そのなかの一つに「扉の養生」というのがあって、たぶんこれに相当すると思います。これは北側から見た絵で、原子炉建屋、タービン建屋です。海があって、津波がこう来て。ここに原子炉建屋の搬入口とタービン建屋があるんですけど、どっちですか?

【あらかぶ】タービン建屋のほう。海側です。ひとつのタービン建屋に、だいたいこういうのが2つぐらいあるんです。

【なすび】これは3と4の間のやつの写真ですよね。こういうやつが各建屋に1つか2つある。

【あらかぶ】はい。もともとのコンクリっちゅうか躯体にケミカルアンカーを打って、そこに穴の開いた鉄骨をはめるんです。もともとはコンクリやけ、鉄骨は使えないやないですか。で、それにアンカーを打って鉄骨をコの字にはめる。コンクリの躯体に鉄骨が付いたことになるやないですか。それにまたボルト留めで、厚みが16ミリある鉄板を貼る。

【なすび】扉をふさいじゃうってこと?

【あらかぶ】塞ぎます。もう開くようにはできん。ボルトを緩めたら開くんですけど、16ミリもあるものやけ、何㌧にもなるやないすか。それをこう3段式ぐらいで。

【なすび】扉の隙間を埋めるのではなく、鉄板で塞いじゃうということ?

【あらかぶ】そうです。

【なすび】なるほど、そういう工事だったんですか。で、今、これも問題になっていますが、第二原発での被ばく量が記録上はゼロ㍉シーベルトになっているんです。第一原発は事故があって敷地の中全部が放射線管理区域の扱いですが、第二原発は建屋の中しか管理区域じゃない。第二原発の最初の水密化工事は扉の外からの工事だったので管理区域外となり、各個人は線量計をつけてない。現場監督しか持っていなかった。それで計測されていないしゼロということになっています。その後の4号機のオペフロの仕事の時は管理区域としてフルバッジつけていますが、結果としてゼロ㍉シーベルトになっています。ちなみに、これは11年8月10日で、あらかぶさんが仕事をする2ヶ月前に福島県が調査に入ったときのデータです。タービン建屋のこっちですから、1時間あたり1マイクロシーベルトぐらいの空間線量になっています。何時間ぐらいいたんですか?

【あらかぶ】普通に残業する日もあって、8時間以上です。

【なすび】10時間と考えると、1日10マイクロシーベルト。10日で0・1㍉。ここで仕事をした1ヶ月半の間に数㍉シーベルト程度被ばくしてるはずですが、線量計をつけてなくてゼロという扱いになっている。これは第二原発4号機のオペフロの絵です。ここからコンクリートの蓋を外して、容器の蓋をつり上げて、中のいくつかの設備をプールに移して燃料を取り出す作業をした。その前に、あらかぶさんはここに入って作業をされています。この4号機のオペフロはどんな仕事でしたか?

【あらかぶ】大きい天井クレーンの鉄骨部分ちゅうかブームで、これ動くんですよね、こう。で、足場組むことができないでしょ。何をしたかって言ったら、この、やり部分の鉄骨が、水素爆発とか何かあったときに吹き飛ばんように補強とか、また地震が来たときに屋根が崩れんように斜材っちゅうて斜めの梁を入れたんです。このクレーンを利用して。このクレーンは長さがまだ何メーターかはあるんで、そこに、足場屋さんに足場を組んでもらって、ここで作業するときはこのクレーンをこっちへ移動して。この鉄骨はこの全面にあるので、いろんなとこに斜材っちゅうかその鉄骨を補強を入れていかないかんので、このクレーンを土台にして足場を組んで作業して。

【なすび】原子炉建屋自体の補強の追加の梁をしたと。そのときにそのクレーンを足場にした。クレーンを足場にするなんて普通無いですよね。

【あらかぶ】でも、そうせな足場組むとこが無いですね。このクレーンっつっても、結構もう、クレーンのこの幅っつっても結構たぶんここからその壁ぐらいまであるんですよ。

【なすび】これ何㌧クレーンです?

【あらかぶ】たぶん100㌧か、150㌧ぐらいですかね。

【なすび】なるほど。第二原発4号機の仕事はその梁をした。他にも何かいろいろあったんじゃないですか?

【あらかぶ】この中では斜材っちゅうか、その梁だけ。

【なすび】そうですか。でもここで1ヶ月半くらい、いや、2ヶ月はやってましたよね。第二原発は一応メルトダウンはしてないので、外より中のほうが空間線量が低いかもしれない。ちょっとわかんないんですけど。そうは言っても原子炉建屋の中ですから、通常でもそこそこの線量はあるので、ゼロってことはないと思います。今、弁護団では、実際にはどのぐらい第二原発で被ばくしたのか計算することをやってます。

 では、福島から引き上げる経緯をお話してもらえますか。

【あらかぶ】11年から働き出して、12年終わりから13年にかけて、テレビでも危険手当の問題とかが出てきて、まともな会社では1万円とか2万円とか出てると作業員が自慢するんです。うちは出とるとか。自分らは2千円しかもらってないのに。

【なすび】それは明細に書いてあるんですか?

【あらかぶ】いや、明細に書いてないです。

【なすび】1万円もらった人は、それが危険手当ってわかるのかしら。

【あらかぶ】クレーンのオペさんとかもう皆が口を揃えて、まともな会社は2万もらいよるって。いつも自分らを部屋へ呼んでお酒とか呑ましてくれて、自分らはコジキじゃねえのになって思いながらもそうやって御馳走してくれるっちゅうことは、自分らはもらいよるけ、もらっていない俺らに還元してくれるという気持ちで、みんな良い人たちばっかりなんですよ、関東の人で。で、なんで俺らだけ2千円なの。会社がごまかしよるかなって感じじゃないですか。だけ、言ったんですよ。俺ら2千円、嘘じゃないのかと。何で急にそんなこと言うかっちゅうて、いや、周りの人たちはみんな2万円とか1万円とかもらいよるけど、俺に正直に言ってっつったら、上からは6千円でていると。そのうち4千円は積み立てで、出張手当プラス2千円は俺たちに払いよるっちゅう話やったんですよ。

で、俺は、それは嘘やったらもう俺は絶対許さんぞって社長に言うたんです。絶対間違い無いつって言いよったんですけど。で、みんなに一応説明したら、みんなも、俺が言うことやけまあ我慢しとこみたいな感じですよね。元請が鹿島建設で、そこの現場所長が朝礼で、みんな目つぶってください、危険手当を1万円以下しかもらってない人は正直に手を挙げれっちゅうて。みんな目つぶらんじゃないですか。見たら、だいたい自分らみたいな似たり寄ったりの人らはやっぱり手、あれでしょ。これはおかしいなと思って。で、また社長に言ったんですよ。お前がそんな言うんやったら自分らの一次、自分らの元請一つ上が塩浜工業ちゅう会社なんですけど、その会社の東北営業所の所長にお前直接言えって言われたんです。言ったら、塩浜工業の所長はシラ切りよったんですよ。だけど俺ら子どもの使いやないけえ冗談じゃないよって言ったら、ほんとは2万円出とるけど、おたくの会社には6千円しか払ってない。その差額は、請けとかで赤字をくらっとるんでその補填て言われたんですよ。自分らは1日出てなんぼなのに、おたくの請負がなんで関係あるんかっていう話じゃないですか。

納得できんとなったら、その所長が、自分たち3人だけには危険手当を払うけそれで黙っとってくれっちゅう感じやったんですよ。全額は払えんけど、ある程度まで遡って払うちゅう話で。で、自分の一緒おった人間も、それでいいんやないかっちゅう感じやったんですよ。でも、俺はそれは納得できんやろって。下請も、自分の友だちとか連れてきたやないですか。こんなんやったら自分も嫌ぞっちゅうて。

で、また会社に、俺は友だちとか連れてきとるけん立場がねえって言ったら、お前の好きにせえって言われたんで、元請にもう1回行って、悪いけど俺らはもう信用関係っちゅうか、俺たちも好き好んで福島に来たわけやないやないですか。ご飯にしても寝るところにしても普通の現場からすればちょっと待遇が悪いかなっちゅう感じやけど、やっぱり津波に流された人とか亡くなった人とか苦しんどる人たちのこと考えたら、自分らはまだそこでおれるだけでもマシって自分に言い聞かせながら仕事を1年なんぼしてきたつもりやけ、今まで我慢して東北のためと思ってしよったですけど、結局、その会社に騙されたみたいな感じで全員で引き上げました。

【なすび】あらかぶさんが福島に入ったときの、雇用してる会社は、今ちょっと話に出てきた、知人の会社が雇った形になっています。あらかぶさん自身も周りに声を掛けて下請を連れてきた形で、その知人の会社の中にみんな雇用されている形になってます。それで、あらかぶさんはその十数人のメンバーのまとめ役みたいな形で行ってたので、危険手当の問題が出たときに彼が代表して話に行ったわけです。そしたらそういうことだったというので、こんなんでやってられるかということで帰ってきたと。だから、きっかけが実は危険手当なんです。危険手当に関しては、結果として払われてないんで、別個にこれから請求の取り組みをしようと思っています。で、さっきの、補填に使ってるっていうのは録音してないの?

【あらかぶ】全然してないです。こういう事になるとは思わんけ、人を信用するいうの。よく人から線量とか記録って言われるけど、働きよる時は放射能の怖さとかわからんかったんで、まさかこうなるとは思わんけ、全然自分はあんまりそういうの疎いちゅうか。そういう記録も証拠もとってないです。

【なすび】今日の新聞で、派遣ユニオンがやってた危険手当の問題は和解したという報道がありました。要するに、東電は、1人あたり1万円ある時点から2万円の割増賃金をつけていると。だけど下のほうの請負は人工(にんく)請で、結局、労働者一人一人に1万2万出ているわけじゃないという言い分で、結局出てない。僕らが聞いている中では、4千円ぐらいが一番多いです。もっと少ない人もいるし、いっぱいもらっている人もいる。だけど少なくとも、今の話にあったみたいに、ある時点では1万円という額が出ていて、それ以上もらって当たり前だというのが、少なくとも朝礼で集まるメンバーの中では、そういうものっていうことになっているはずなのに、そうじゃない人たちがいっぱいいたと。だけど、それを表だって言える雰囲気じゃないということです。言ったら上から何か言われる。

【あらかぶ】自分は解雇されても構わんですけど、中には仕事がやっと見つかって来た人も結構多いです。だけ、やっぱりクビになりたくないっちゅうので、泣き寝入りやないけど黙っとる人が結構おったです。

【なすび】福島第一の仕事は半年ごとに東電との契約が更新されるので、半年単位で業者ごと切られることがある。文句言った労働者1人が切られるんじゃなくて業者ごと切られる恐れがあるから、周りのことを懸念して言わない。これは除染でもよくあります。あらかぶさんは、13年12月に引き上げて、戻ってきて、それから体調が悪くなったんですよね。

【あらかぶ】13年12月に引き上げたんですが、やっぱり自分も家族を養っていかないといけないんで、帰ってすぐ地元の現場に入って、ちょっと作業したら動悸がするっちゅうか現場の階段を上っても息苦しかったり。高い所は苦手じゃないですが、ちょっと高い所の縁にいたらめまいがするんです。福島で1年なんぼもおってぬるま湯につかっとったっけえ体力無くなったんかなあとか思いつつ、急に空咳が出て、病院に行ったら風邪っちゅう診断を受けて抗生物質の風邪薬をもらって飲んでたんですけど全然症状が改善されなかったんですよ。

たまたま電離検診を元請に出す期限が1ヶ月しか無かったんで、会社休んで地元の病院に行って血液検査を受けたんですが、その夜、病院の先生から電話がきて、今日の検査で癌が出たとか言うけ、先生それ人の血液と間違っとるんじゃないですかって言ったら、いや間違えることは無いと。何の癌ですかと言ったら、白血病の可能性が高い、明日すぐ病院に来てくれっちゅうて。それまでもし体調が悪くなったら、すぐ救急車でどこどこの病院に行けるようにしておるぐらいのことを言われたんです。翌朝一番に病院に行ったら紹介状書いておって、すぐ行ってくれっちゅうことで。それで自分たちの町ではちょっと大きい、癌では有名な病院に紹介されて行きました。

【なすび】そこで精密検査を受けた?

【あらかぶ】骨髄穿刺っちゅうて腸骨にドリルで穴を開けて、手回しで骨髄を抜いて検査するんです。何時間もかかるんです。先生がもう1回血液を測ったら、末梢血に癌が30%近く出とるけえ間違いなく白血病やろうと。それが急性リンパ性なのか骨髄性なのかは病理結果が出るまでわからんけど、白血病はほぼ間違い無いと言われて、頭をハンマーで叩かれたみたいな感じでした。そのまますぐ入院して抗がん剤に耐えられるか心臓の検査とかするって言われたんで、先生に、今日すぐせな自分はもう死ぬんですかねって言ったら、なんでって言われたから、自分はもうここから帰れんような気がするけえ1回帰って子どもに説明せないけんと。恐怖もあったかもしれんですけど、とりあえず1回家に帰りたいと思って、帰りました。子どもは当時、5歳と7歳と9歳でした。

【なすび】もともと福島に行く時も、子どもの映像見て、福島に行ったということもあったんですよね。で、帰ってきて、白血病じゃないかと言われて、とにかく一度家に帰りたいと。1日過ごして病院に行ったんですか?

【あらかぶ】子どもに何て説明していいかわからんでしょ。癌とか言っても子どもは、はあ?ちゅう感じやないですか。結局は言えんづくで、ちょっと入院が長くなるかもしれんけど、ママの言うことちゃんと聞けよみたいな感じで。それから約10ヶ月入院治療しました。

【なすび】入院中の様子を少し聞かせてください。

【あらかぶ】抗がん剤1クールだいたい1ヶ月半のスパンで3回して、4回目に最後、地固めっちゅうて骨髄の中を致死量ぐらいの抗がん剤を打って洗い流して、白血球がゼロに落ちるまで。最後その抗がん剤を打ったときに1回寛解状態になるでしょ。癌が散ったときに良い細胞を採って、それを冷凍保存しとって最後の地固めのときに体に戻すんですよ(自家造血幹細胞移植)。それが正着したんで生き延びた。だけどその間は抵抗力が無かったんで途中で敗血症を引き起こして、何かちょっと死にかけちょった。

【なすび】ああ、そうなんだ、敗血症になってたんだ。

【あらかぶ】敗血症になって抗生物質とかばんばん打たれて、輸血はもう何回したかわからんです。自分で血を作りきらんでしょ。抗がん剤投与されよる時は、血小板と赤血球を60回ぐらいはされてましたね。だけど、死ぬっちゅう思っとったけえどんな治療でも苦にはならんかったでしたね。

【なすび】でも結構、苦痛だったでしょ。

【あらかぶ】今もう1回せえって言われたらもう。その時はもう死ぬって正直思っとったですよ。夏目雅子とか本田美奈子とかも急性骨髄性白血病で死んだやないですか。俺も死ぬなあって思って。だけどもうどんなことされても。カテーテルも、ここの静脈に3本ぐらい入れられとったんですよ。ここから全部抗がん剤とか投与されよったんで。何で首かっちゅうたら、最後に何かなったときでもここの血管が一番ずっとそのまま使えるけこっちに入れとくとか言うて。無菌室で、抗がん剤を打って白血球が落ちて、ある程度元に上がってきだしたら病人部屋に戻って、またちょっと抵抗力がでてきたら1週間だけ家に帰れて、また入院。ずっとその繰り返し。

【なすび】入院中は家族もあまり面会できないですよね。

【あらかぶ】そうです。子どもはいろいろな菌を持っているらしいんですよ。土を触ったりとかするやないですか。だけ、テレビで見るみたいなガラス越しで、子どもが向こうでへらへら笑ってパパ~とか言うけえ、こっちは具合悪いのに。で、帰ってきたらとたんに涙が出たりとか。落ち込んで、治るんかなとかだんだん考え出したり。

【なすび】幸い10ヶ月の入院で自宅に戻れて、今は寛解状態ですよね。ほぼ癌細胞は見られないぐらいのところには落ち着いてきていて、様子を見ているっていう。

【あらかぶ】自分ではもう仕事ができそうな感じですけど。先生はまだと診断するんで、もうちょっとかなと。最近はアイコス吸ったり、たまに外出たら酒をたしなむぐらい復活しよる。

【なすび】白血病の治療はやっぱりしんどかっただろうし、それでうつ病も労災認定されていますよね。

【あらかぶ】死ぬのが怖いとかはあんまり考えんようにはしとったですけども、自分がしてきた行いで罰を与えられたっていうか。それで悟るしかないでしょ。人間っていつか終わりが来るやないですか。それがちょっと早かったんかなって思うしかないでしょ。とか考えよったですけど、その時、同時に医療用の注射器みたいなんがタイマーになっとって入りよるんですよね。先生は何も説明してくれんでしょ。夜寝とっても体がぞわぞわしたり、ベッドから体が何十㎝か浮いとるような感覚になるんですよ。

寝付きも悪い。昼にずっと寝とるのに夜に目が覚めたりとか。先生に言うたら、モルヒネを入れよるけえねちゅう感じやったんですよ。痛みを取るためのモルヒネやったんですよ。でも自分は今ままで味わったことのない気色悪い感じで、これ止めてくれって言ったんですよ。止めたらのたうち回りますよって。汚い話ですけど、下痢も1日何十回も。たれたことはないし、おむつもせんかったけど、もうずっと便所に座ってました。そんな状態のときもあったです。

【なすび】今では笑えるかもしれないけど、かなり大変な状況だったですね。

【あらかぶ】その時は自分では大変て思わなかったのが不思議です。あとあと治ってきだしたら、いろいろ甘えが出てきて、ここが悪いとか具合悪いとか。何かそんな感じすよ、人間は。

【なすび】義侠心で福島に行って白血病になって、それにしてはあまりにも酷い話ですよね。若い時にヤンチャしたからじゃないと思うけれども、自分では何か自分を納得させるためにそう思ったりするかもしれないけど、実際には仕事に行って結果的になったことなわけで、きちんと補償されるべきものですよ。労災申請するにあたってはどんな経緯だったんですか?

【あらかぶ】福島で働きよったときに、鹿島の若い監督とかとわりに仲良くしとったんですよ。その人が、自分らが最後帰るってなったときに、所長も来て、何が原因なんかって言われたんですよ。帰る、辞める、引き上げるっちゅうのが。それは上を通り越すようなことになるけえ自分らがどうのこうのはちょっと言えませんって。正直に言ってみろとか言われたんですが、言えませんて、そんな問答をした。北九州に帰った後に、監督から、何しよるんですかっちゅうて2ヶ月後ぐらいに電話がきて、白血病になって死にかけちょりますって言うたら、今度の休みに面会に行きますとか言うて。

で、来よったときに労災の認定基準をその人たちが調べてくれたら、1年以上の潜伏期間で5㍉シーベルト以上は急性白血病の認定基準に達するから労災認定されるでしょみたいな感じで。鹿島が何かいろいろ、原子力対策室か何か部署の人から電話がかかってきて。自分は病室でうーうー言いよるけえ、知人の社長と鹿島がいろいろ話し合って、鹿島がいろんな書類とか全部集めてくれて労災を申請した。認定されるまで1年半以上かかったんですけど、その間ずっと鹿島から1ヶ月に何回も電話がかかってきて、もうちょっと辛抱して下さいねみたいな感じで。労災認定されたときも、富岡労基署の労災課長が、今まで何十年も働いてきたが、こんだけ元請が動いてくれる光景を見たことないで感動したと言うんです。そんだけ鹿島は動いてくれたです。でも鹿島は、一応うちが最終事業者やけ労災申請するけど、たぶん竹中で被ばくしたんじゃないかみたいなことを冗談で言いよったです。

【なすび】あらかぶさんは、仕事をする過程で鹿島の人と通じ合える形になったことも背景にあると思います。他の労働運動の人たちが聞いたらびっくりすると思うけれど、鹿島の担当者がかなり動いてくれて労災申請に至った。イチエフでの最後の現場の元請が鹿島だったので鹿島が全部やったわけです。あらかぶさんの被ばく量はほぼ20㍉シーベルトですが、鹿島の現場で被ばくしたのは5㍉。竹中の現場が11㍉。残りが九電の玄海で4ミリ。だから竹中の現場が半分以上です。今日の話でもわかるように、竹中の現場のほうが全然杜撰で酷かったんですが、最後の現場が鹿島だったので鹿島が動いてくれた。たぶん労災申請するにあたっては鹿島でよかった。竹中だったら、まともに動いてくれなかった気がします。では、労災認定されて、損害賠償裁判をするに至った理由を教えて下さい。

【あらかぶ】15年10月20日に労災認定を受けて、翌日の新聞に、朝日、読売、毎日とか全部一面に載ったんですが、東京電力のコメントとして、「下請作業員の労災案件についてコメントする立場に無い」とあった。たぶん協力企業と書いてたと思うんですけど、それを見た瞬間、怒りがわきました。

【なすび】これは、認定された翌日の東京新聞の朝刊です。専門家の検討会で、福島第一での被ばくが白血病の大きな原因になったと判断したということで業務上の認定が行われた。最後に、東電の広報担当者の話ということで、東電自体は記者会見とかしてなくて、記者が東電から話を聞いて書いたんですが、「作業員の労災認定や認定状況について当社はコメントする立場にない。今後も作業改善に取り組み、被ばく管理を徹底していく」というコメントをしている。直接の雇用者じゃないから、原理的に労災認定の手続きに加わらないのは当たり前ですが、そんなこと言ってるわけじゃない。河北新報にはもうちょっと書いてあって、一応、「作業員の方にお見舞い申し上げるとともに」とかって入ってますが、これも本当にこう言ったかどうかは、記者が書いていることだからわかりません。

 これは、福島第一の収束作業で被ばくによる初の労災を厚労省がプレス発表したものです。わざわざこういうことをやった。2人目でもやりました。プレス発表の資料には、左側にあらかぶさんの認定状況と、どういう事案かが書かれている。それにプラスして、一般的な癌の線量と発生比率のグラフを描いて、「科学的に被ばくと健康影響の因果関係が証明されたものではない」とわざわざ書いている。この資料で厚労省が記者会見したので、各紙が、認定はされたが因果関係が証明されたものではないと厚労省は言っている、と書く。産経新聞は「被ばくで白血病はデマ」とか書く。すると、イチエフで働いて白血病になったのはデマだみたいなことを言い出すやつらがいたわけです。こんな経緯があって提訴に至ったんです。だから、あらかぶさん的には、直接は現場が酷かったこともあるけれど、東電の態度も含めて、収束作業で働いた労働者に対してひどいじゃないかという思いです。自分が賠償金を取りたいというよりかは、他の労働者や全体の労働環境のためにということです。この裁判は銭をいくら取るとかいう問題ではない。労災認定されてるにも関わらず、仕事での被ばくと白血病の因果関係を否定するみたいなことがまかり通ってはまずいわけです。そういうことをきちんと認定させ、損害賠償も払わせることが、これからの労働者の労働環境を含めて非常に重要なので、この裁判はどうしても勝たなきゃいけないと思います。

 東電は、東電と九電をわざわざ分けて、東電は16㍉、九電は4㍉、それぞれ、この被ばくでそんな影響が出るわけないと言う。合算して20㍉のことが問題だと思うんですが、いずれにせよ100㍉シーベルト以下だったら健康に影響なんか出ないという立場です。ですから、この仕事の被ばくと白血病は因果関係が無いというのが、東電、九電の今の主張です。それを今、全面的に争っています。それ以外にも論点はありますが。

 これは、東電の最初の準備書面です。「かかる放射線被ばくにより原告が白血病及びうつ病に罹患した」という関係を、「是認しうる『高度の蓋然性』は認められず、原告主張の損害と本件事故との間に事実的因果関係は認められない」。準備書面っぽい書き方になってますが、とにかく仕事と、その白血病は関係無いんだ、だから労災認定なんか関係無いんだというのが彼らの立場です。僕らとしては、因果関係があることを証明する。とりわけ100㍉以下だったら影響が無いなんていうことを、そんな前近代的なことを言う人はあまりいないんで。日本の中ではそういうことを結構、特に電力会社と国は言ってますが、世界的にはそうではない、低線量被ばくでの健康影響の論文はいっぱい出てます。僕らはそれを使って、あらかぶさんの被ばく量でも因果関係はあると、この白血病に繋がった理由は仕事であるということを証明するのが一つ。もう一つは、ニエフのこともありますが、実は20㍉シーベルトとかではなく、もっと高線量の被ばくをしているんじゃないかということです。実際、胸につけたガラスバッジは方向性とかですごく誤差がでかい。実際、東電も3割4割の誤差はあるものと認めている。そんなことや遮蔽ベストの件とか含めて現場の状況や、実際にあらかぶさんはこのくらいの被ばくをしている可能性が高いというような数字を出すとか、いくつかの柱で争おうと思っています。

 これは、裁判所側が作った論点整理のための進行表です。東電、九電側は、最初に僕らが訴状で言ってることに対してずっと反論してきて、その後も、こちらの準備書面に対して反論していますが、次回の9月13日の口頭弁論で一応、それが出尽くすと。その後、11月、1月は、原告側が、それに対してまた反論して、そこら辺を経た上で、証人をどうするかという段階に入るという形です。なので、次回は問題のあるところは一応論点として向こう側が出してくる感じになるかと思います。

 裁判自体は非常に難しい裁判です。これまで被ばく労災で損害賠償が裁判で勝って認められたケースはひとつもない。というか裁判自体があまり無い。なので100㍉シーベルト以下では健康影響はないという電力会社の主張に負けるわけにはいかないんです。裁判官は、現場のことも労災認定基準も全く知らないど素人ですが、すごく真面目にやろうとしている。その裁判官に対して、どれだけ俺たちが言いたいことを伝えるかが、結果を左右するのではないかと思っています。その意味で、社会的注目度を突きつけるためにもぜひみなさん法廷に足をお運びいただければと思います。この間、法廷に入ってきた裁判長がいきなり見回して、協議するって言って引っ込んじゃったんです。これはまずいなと思ったんですが、傍聴席に空席が目立つので小さい法廷で良いのではないかと言いました。そういう話なんで、とにかく法廷を傍聴人で満たすとことをこれから続けていきたいので、ぜひ、みなさんのご協力をお願いします。