労災職業病の企業責任の追及 -損害賠償や職場改善を実現する
労災職業病の企業責任の追及
-損害賠償や職場改善を実現する
2018年10月6~7日にコミュニティ・ユニオン全国交流集会が、岩手県盛岡市で開催された。毎年、労災職業病関連の分科会が2つ行われているが、今年は「労災職業病の企業責任の追及」という分科会の運営に関与・参加したので報告する。【川本】
はじめに
この数年間、全国交流集会の分科会では、メンタルヘルスやパワーハラスメント問題を2つの分科会に分かれて開催してきた。今年の第1分科会はメンタルヘルスやパワハラの労災認定をテーマとした。一方で第2分科会では、課題をメンタルヘルスなどに絞らずに、労災職業病の企業責任を追及するという課題で、労働組合の役割を改めて問い直す内容とした。いろいろなユニオンでの経験を共有できればと企画したが、事前にはどこのユニオンからも報告や問題提起が寄せられなかったので、制度や経験を話すことと質疑が中心になるかもしれないと思っていた。しかし、ふたを開けてみると、具体的に取り組んでいるユニオンからの積極的な参加があり、大変有意義な経験交流となった。
参加者の経験紹介
第2分科会には10ユニオン11名が参加し、自己紹介や活動紹介から始めた。
・メンタルヘルスの相談が多い。
・同僚が上司のパワーハラスメントが原因で体調を崩して退職届を出してしまったが、交渉の結果撤回することができた。しかし復職は実現していない。
・腰痛で労災請求したが不支給となり、審査請求も棄却された。会社が事実と異なる主張を労働基準監督署にしている。
・頸肩腕障害を発症したが、職場に戻って頑張って働いてきた。勤務時間内通院なども獲得する一方で、理解してもらえない同僚から嫌がらせを受けたりもした。
・パワハラと長時間労働が原因で同僚が自殺した。ご遺族の訴えを聞いて、一人だけで頑張っておられた労働組合に自分も加入して支援してきた。労災認定されたので会社の責任も追及する必要がある。
・建設労働者が転落災害に遭い、後遺障害1級で認定された。会社に対する損害賠償請求を検討している。
・パワハラでうつ病になり休職期間満了後に解雇された。労災請求して業務上を勝ち取ったので解雇を撤回させ、会社に休業補償上積み、職場改善を要求し、一定の成果があった。本人はなかなかよくならない。
労災保険と民事損害賠償の一般的な解説
よこはまシティユニオンが、労災保険制度と損害賠償を比較しながら、法的な側面に加えて、労働組合がどのように取り組むべきかについて報告、問題提起した。
ゴンチャロフ労働組合から
ゴンチャロフ製菓で20才の若者が、現場のみんなに聞こえる強い叱責を含むパワーハラスメントと長時間労働が原因でうつ病になり、電車に飛び込み自殺した。遺族であるお母さんはうつ状態となったが、同じ現場で働いていた同僚の紹介で、労働組合(なんとその時点では竹村委員長一人が35年間も頑張っていたとのこと)に相談。弁護士さんのアドバイスで資料や証拠を必死で集めて労災請求。同時に街頭で署名集めなども行った結果、6月に業務上認定を勝ち取った。分科会に参加した書記長は、支援集会でのお母さんの訴えを聞いて、組合加入を決意。さらに2人が加入し、4人の組合となった。9月にこの問題についての団体交渉が開催され、13項目の要求を提出。社会的な取り組みも含めて、闘いを継続している。
東京ユニオンから
牛乳などを工場から販売店に運ぶ明治乳業の子会社の下請け会社で、運転及び運搬業務に従事。腰痛になってヘルニアと診断されるが頑張って働いてきた。いよいよ休業を余儀なくされて労災請求。運転ばかり、運搬ばかりだと労災認定されたかもしれないが、両方とも負荷が大きくないと決めつけられた。会社は嘘ばかり並べたてた。同僚もそれに沿った証言をするしかなかったようだ。自分がしていた仕事を今は3人でやっている。それでも労災不支給、審査請求も棄却されたので、再審査請求するつもりだが、結果がどうであれ、自分の仕事のこと、腰痛のことをきちんと記録として残したい。
よこはまシティユニオンから
アパレル会社の販売店で働く女性が、上司からのパワーハラスメントが原因で休業を余儀なくされた。休職期間はわずか1ヶ月だったため、退職を促されたことに、納得できずユニオンに相談した。会社はパワハラを認めず、解雇を強行。しかし労災請求したところ、多くの同僚がパワハラの実態を証言してくれたもようで、業務上認定された。再開された団体交渉で解雇撤回、上積補償の支払い、研修の実施などを確認した。まだ復職できる状態になっていないが、家族と一緒に頑張って交流会などにも参加している。
反省と課題
上記の通り、大変有意義な経験交流となった。しかし経験や認識の開きも大きいために、なかなか突っ込んだ議論にまでは至らなかったので、次回、同様の分科会を開催する際には、経験の共有と併せて、一定課題を絞った議論(例えば損害賠償の算定方法、職場復帰・改善の戦術など)をしたいと考える。