医療ソーシャルワーカーを知って活用しよう:桑原規夫さん(聖マリアンナ医科大学病院MSW)
目次
- 1 医療ソーシャルワーカーとは?
- 2 社会福祉士という国家資格
- 3 医療ソーシャルワーカーは病院から追い出す人?
- 4 病気になると、暮らしの問題も出てくる
- 5 専門知識を持ち、心理・社会的な相談にも対応
- 6 石綿関連疾患の特殊性から関わることが必要
- 7 調整・連携し、生活・福祉の視点も加えて
- 8 医療ソーシャルワーカーはどこにいるのか?
- 9 がん相談支援センター「アスベストによる肺がん及び中皮腫に関する医療相談」
- 10 患者や家族が抱える課題を一緒に考える
- 11 いつ相談しても大丈夫
- 12 労災保険、石綿救済制度、健康管理手帳、障害年金、身体障害者手帳、介護保険
- 13 生活全般の相談に乗る
- 14 アスベスト問題は広く理解する必要がある
- 15 石綿労災問題は早い対応を心掛ける
- 16 労災保険や石綿救済制度の今後の課題
医療ソーシャルワーカーとは?
聖マリアンナ医科大学病院の桑島と申します。神奈川県医療ソーシャルワーカー協会からお話をいただき、今日この場でお話させていただくことになりました。神奈川県医療ソーシャルワーカー協会というのもあるんだな、ということを把握していただければと思います。では早速、用意したものでお話させていただこうと思います。
医療ソーシャルワーカーという職種をご存じでしょうか? という話からです。自分たちが思っているほど馴染みのない職種かなと私たちの団体では考えています。私は病院に所属していますが、この略語はよく使います。Drは医師、Nsは看護師の略です。では、SWは何の略でしょう? 実は病院の中でもこの略がわからない人がいます。ソーシャルワーカーです。看護師がよく使う略語で、シャワーの介助もSWと書くので間違える人もいますが、今回はソーシャルワーカーの話ですのでSWと書いてあったらソーシャルワーカーのことをだなとご理解下さい。
社会福祉士という国家資格
病院等でいろいろな相談を乗ってくれる人は、自分のことを何と呼ぶか。相談員、ソーシャルワーカー、医療ソーシャルワーカーなどありますが、実はこの3つは名乗ってもいいのです。医療ソーシャルワーカーという資格や、ソーシャルワーカーという資格は無いし、相談員と名乗ってもいいのです。すると、どこまで専門性があるのか、どういうことをしっかりと学んでいる人なのかわかりませんので、ソーシャルワーカーや医療ソーシャルワーカーと名乗って仕事をしている人はほとんど、社会福祉士または精神保健福祉士の資格があります。それぞれ法律があり、年1回の国家試験を受けて合格するとなれる国家資格です。この資格をもってソーシャルワーカーまたは医療ソーシャルワーカーとして名乗ってやっている人がほとんどです。ただ、資格が無くても名乗っちゃいけないということにはなっていません。資格を持っていないから、その人がどうなのかとは言えませんが、ひとつの判断材料として、皆さんが相談するソーシャルワーカーや医療ソーシャルワーカーはしっかりとその国家資格を持っているのかチェック入れていただいてもいいかもしれません。それだけの勉強をしてきている人なのかの見極めの材料にはなるのかなと思います。
医療ソーシャルワーカーは病院から追い出す人?
ソーシャルワーカーはいろいろなところで働いています。例えば、行政の役所の中で働いたり、子どもの関係や虐待のことに対応する児童相談所にもいます。保健所にもいます。最近は、学校に所属していじめや不登校や家庭の問題を扱うスクールソーシャルワーカーもいます。障害分野や高齢者分野に特化したソーシャルワーカーもいますし、自分で起業して、独立型ソーシャルワーカー事務所を立ち上げて地域で働く人もいます。中でも医療機関で働いているソーシャルワーカーを医療ソーシャルワーカーと言い、私もその一人です。
では、医療ソーシャルワーカーは実際に何をしているのか。お金の相談をする人とか退院の調整をする人と言われることが多いですが、中には、病院から追い出す人と言われる場合もあります。どうしても退院しなければいけない場合があるので、そう思われてしまうのは良い支援ではないですが、転退院に関わることについても確かにやっています。でも、お金の相談をして退院をさせている人なのかというと、そうとは言いたくないので、今日は、医療ソーシャルワーカーは実際に何をしているのか、何の専門なのかというのをお話しようと思います。
病気になると、暮らしの問題も出てくる
病気を抱えたり病院にかかると、一昔前までは医療は体の治療がメインだったのですが、今はそういう時代ではありません。医療機関にかかる、病気を抱えるということは、体の問題だけではなく、暮らしの問題が出てくる。一昔前までは本当に病気が治らない時代や、療養先に入って在宅とか地域に帰ってくることができない時代がありましたが、今の時代は病気を抱えながらも生活していく、地域で暮らしていくという時代です。医療の問題だけではなくて、生活、暮らしの問題も考えていかないと、病気に対応できない時代になってきました。治療にメインで関わる医師や看護師にここだけというと怒られますが、体の問題だけではなくて、暮らしの問題を調整していくことが必要になります。そうすると、一緒に考えて相談する職種が必要になります。そこに、ソーシャルワーカーやリハビリの先生やスタッフ、栄養と食事については栄養士であったり、医療機関にいる様々な専門スタッフとソーシャルワーカーが一緒に考えていくことが体や暮らしを考えていくことになると思います。
専門知識を持ち、心理・社会的な相談にも対応
少し専門的なバイオ・サイコ・ソーシャルで考えようという表を持ってきました。医学モデルと生活モデルという考え方があり、医学モデルというのは体のことを中心に考えるということで、最近は医者でもこれは違うよねと。体のこと、心のこと、社会的なことを全部一緒くたに考えて患者さんやご家族を診て支援しましょう、心理・社会的な部分も大事にしましょうという考え方が強くなってきています。まさにソーシャルワーカーはこれらの部分を中心にみながら、体のこともみさせてもらっています。なので、患者さんやご家族に対して、体だけじゃない、心だけじゃない、社会だけじゃない、トータルの相談をさせていただくことが必要になっています。医療ソーシャルワーカー、Medical Social Worker(MSW)は、病院等の医療機関において、社会福祉の専門知識を持ちながら心理・社会的な相談に対応していく職種で、生活や生活設計を一緒に考える職種と憶えていただき活用していただけるといいのかなと思います。生活・社会面から一緒に生活を考えていく中でお金や療養先や社会保障制度のことが問題になる、と憶えていただきたいと思います。
石綿関連疾患の特殊性から関わることが必要
パワーポイントで表を作ってみました。特に病気が無く生活されていると、医療・福祉・介護や地域のこと、行政制度やサービスには関わらないかもしれませんが、発病しますと医療の必要性が出てきます。すると、微妙にご家族の中でも関係性がギクシャクしたり、仕事に行けなくなったり、友だちとの関係が薄れたり、ご家族も介護で仕事に行けなくなったり、お子さんの学校との結びつきを調整する必要が出てきます。半面、医療と福祉とが強く繋がったり、サービスと制度とが強く繋がったりします。この接点にソーシャルワーカーは入らせていただいて調整をします。どうして今日この様なお話をさせて頂くことになったか? それは、石綿関連疾患の特殊性から、患者さんやご家族が抱える負担は非常に大きいので、そこにソーシャルワーカーが関わることは必要だろうと私は思っています。また、先ほどお話しされた田中さんのような若いアスベスト関連疾患の方にお会いしたのは私は初めてで、ほとんどの方は、長く仕事されていたり、昔そういう関係の仕事をされて高齢になってから発病した方です。石綿疾患の特徴は、日本の国として社会的、また世界的な問題があります。その社会性を考えた時、ソーシャルワーカーの必要性が出てくるのかなと思っています。
調整・連携し、生活・福祉の視点も加えて
様々な制度、代表的な石綿救済制度や労災制度は大変複雑です。ご本人やご家族だけで制度手続きをするのはかなり負担だと思います。では、病院の中でどこに相談すればいいのか、あの先生には言い辛いし、リハビリのことはどこに聞けばいいのか、在宅医療はどうすればいいのか。今の社会や病院の組織は結構複雑です。なので、そういうことに対しての調整役、連携役、ソーシャルワーク(社会福祉援助)の技術を使ったお手伝いが必要になってきます。ぜひ医療ソーシャルワーカーを活用して頂きたいと考えています。
では、医療ソーシャルワーカーはどこにいるのか。今、病院は診療報酬で決められたお金をもらうことで経営的に成り立っていますが、その診療報酬に、ソーシャルワーカー、社会福祉士を置かないとお金が取れませんという仕組みが出来ていて、医療機関にはソーシャルワーカーは基本的にいると思っていいです。ただ100%ではないです。
医療ソーシャルワーカーはどこにいるのか?
先ほど、ソーシャルワーカーと名乗って社会福祉士資格を持っているかどうかが一つの判断材料になると言いましたが、病院にソーシャルワーカーがいないとしたら、その病院の考え方、スタンスはどうなのかなと、ソーシャルワーカーの立場からは思います。ソーシャルワーカーを配置するという視点が無い医療機関はちょっとどうなのかなと思います。ただ、病院の中でソーシャルワーカーがどこにいるかというと、これはちょっと複雑です。聖マリアンナ医科大学病院では「メディカルサポートセンター」という部署にいます。他では「患者相談センター」「総合相談センター」「地域連携室」「地域医療連携室」など呼び方は様々です。病院の窓口やスタッフに、「ソーシャルワーカーはどこにいますか」と聞いてください。名乗り方は様々で、「福祉」「連携」「相談」という名がついているところに声かけていただければ、ソーシャルワーカーはつかまります。もうひとつ、今の日本は、がんの支援に法律も作ってすごく力を入れています。聖マリアンナ医科大学病院など、がんの拠点病院には、「がん相談支援センター」を置かなければいけないことになっています。
がん相談支援センター「アスベストによる肺がん及び中皮腫に関する医療相談」
がん相談支援センターでは様々な相談業務をしています。患者会を立ち上げる、様々な相談に応じる、石綿関連疾患全部ではないですが「アスベストによる肺がん及び中皮腫に関する医療相談」も行っています。皆様がかかっている医療機関で相談したいという時、がん拠点病院でがん相談支援センターがあるのでしたら、そこも相談窓口になります。そこにソーシャルワーカーも配置されていますが、看護師が対応しているところもあるので100%ソーシャルワーカーが出てくるとは言い切れませんが、かなりの確率でソーシャルワーカーが配置されていますので、ここも相談窓口のひとつだと思います。
医療ソーシャルワーカーの協会が全国であり、2017年で約6千人います。北海道は医療ソーシャルワーカーの活動が極めて強いところで、北海道協会は最新で956名います。病院で働くソーシャルワーカーが全員加入しているわけではないですが、協会に加入しているのは約900名。神奈川県が740名と言われています。これだけの人数が協会に所属しているので、病院に受診されたらソーシャルワーカーはだいたいいるかなと思って頂いていいと思います。
患者や家族が抱える課題を一緒に考える
日本の全国の協会ではパンフレットを作って、病院にソーシャルワーカーがいますよと啓発していますが、まだまだマイナーな職種なのかなと思います。医療ソーシャルワーカーは、実際何しているのという話から実例についても述べます。
厚生労働省から医療ソーシャルワーカー業務指針が示されています。様々な問題の心の面も考えた支援。退院の支援。社会復帰の支援。就労や復職や修学についてなど。受診することについての支援やお金の関係の支援。地域連携の支援など、こういうことをやりなさいと厚労省が決めていることもあります。
とある月の、私たちの病院での支援の内訳を見ると、退院の調整が約45%。心理社会的支援と言われる、困っていることや制度活用のことなどが35%でした。決して退院のことばかりやっているわけではありません。
ソーシャルワーカーはどう動くか。ここは医者にしたほうが良かったかもしれないですけど、こうではありませんよということを示したくて作った図です。患者さんや家族が疾患を抱えているところに治療、介入するのは、どちらかというと医療のやり方です。最近はそうでもないかなとは思いますが、医者はどちらかと言うと上から目線で、課題を抱えていることが患者の問題かのように言う医者もいるかもしれません。ソーシャルワーカーはそういうスタンスではないのです。対等であることは当然ですが、患者さんが抱える課題を外に出して(外在化)、その課題に対して一緒に協働して考えていきましょうというスタンスです。課題に取り組むのは患者さんやご家族であり、それを支援するのがソーシャルワーカーの立ち位置です。なので患者さんやご家族が問題なのではなくて、その課題について一緒に取り組んでいきますよということをお伝えしておきます。
いつ相談しても大丈夫
しかしソーシャルワーカーだけで何か出来るというわけではありません。様々な職種や他の医療機関や行政とも連携しながら患者さんやご家族の支援をしていきます。アスベストのことについては、神奈川労災職業病センターなど専門にやられている各センターと連携しながら行いますし、労働基準監督署や環境再生保全機構とも連携を取ります。介護や医療や療養先の問題等についても様々な関係機関と連動して動きます。
では、いつから関わるのか、いつ相談するのか。「診断が出てからですか」「生活的な課題が出てきてからですか」と言われます。確かに、診断がついて医者から私たちに依頼があって繋がるというのが一番多いかもしれないです。また、ご本人やご家族が直接窓口にいらっしゃることも結構多くあります。決まりはありません。ソーシャルワーカーとの関わりは、いつからでも大丈夫です。どの時点でもご相談できます。
労災保険、石綿救済制度、健康管理手帳、障害年金、身体障害者手帳、介護保険
少し実践的な話に入ります。実際に何を行っているかということです。制度、特にアスベスト関連疾患については労災保険や石綿救済制度や石綿健康管理手帳、労災保険ともすごく複雑な兼ね合いになってきます。障害年金や身体障害者手帳、介護保険など使える制度や社会資源の調整を実際に行っています。また、病気がわかったときそれをどう考えていくか、仕事を続けているがどうしていけばいいのか、労災保険の申請を会社に言いづらいんだけどどうしようかなどの相談に乗っています。
この病気は、本当に憤りを覚えるというかひどいなと思うところがあります。昔に働いていたこと、そしてその仕事にすごくプライドをお持ちの方とご相談することが多いですが、そのプライドをかけて、ある意味日本の成長を自分が支えてきたぞという思いで仕事をしてきた。その仕事をやったことによって石綿にばく露して歳とってから発病する。すごくショックを受けられている方が多いです。私たちがお話を聞いて、簡単にそれを軽減できるわけではありませんが、そのことについて一緒に考えていくということができるかなと思います。
生活全般の相談に乗る
適切な受診先、場合によってはここの医療機関よりもこっちがいいですよとか、そもそも受診していいのかなど受診の支援も行います。また、抗がん剤を使うことになったが、お金が心配だから、副作用が心配だから、するかしないか決めかねているなど治療に関係する相談も担当します。場合によっては看護師や医者と連携して動きます。お金の問題もご相談しています。労災や身体障害者手帳制度をしっかり知ることによって、医療費を気にしないで治療できる方もいらっしゃいます。また、病状によっては療養先について考えます。在宅に訪問診療や訪問看護を入れたり、家での生活が難しいので医療機関に入院する調整ができないかということも行っています。
実際に一番多いのは医者からです。アスベスト関連疾患の診断がついたので相談して下さいと言われることが多いです。医者によっては治療と制度のことだけを考えてやってきます。制度のことを説明して、とソーシャルワーカーに依頼してくる医者もいます。医者も労災申請や石綿救済制度のことを勉強していますので、言ってくると思います。ただ、私たちは制度のことだけではなく、生活に関する様々なことをご相談させていただくので、制度のことでご相談に来ていただいても、生活全般のことをお話すると思って下さい。もちろん、お話したくなかったら、話したくありません、と言っていただいていいんですが、私たちは生活全般のご相談に乗っています。
アスベスト問題は広く理解する必要がある
昨年1年間私たちが相談させていただいた中皮腫の方だけを挙げました。年齢をみると、やはり若い方はいなくて、65歳以上の方が多くを占めています。高齢の方の相談は、疾患を抱えながら労災申請するのは負担があるとか、仕事をしてきたことへの思いがあって、ご相談はしても、無理矢理に労災申請をやりなさいということまではしませんので、実際には労災に該当するだろうという方でも申請に至らない場合もあります。これについての評価は様々だと思います。もっと何か支援するべきだという意見もあるかも知れません。思いや申請するかしないかということに関して、高齢の方が考えていくのは簡単なことではないなあと日々思っています。年齢というのはやはりポイントかなと思っています。
実際にご相談させていただいている方は、ご本人なのか、ご家族なのかはきれいに分かれました。私たちからすると、ご家族がサポートした方がいいだろうと思いますが、中にはご家族には言いたくない方もいらっしゃいます。また、ご家族に負担をかけてしまうと思う方もいて、自分だけで全部やりますという方もいらっしゃいます。実際には1人で全部することは難しいと思いますので、ご家族の役割は多いのかなと思っています。アスベストの問題は、様々な社会的なことや制度の問題からも、患者さんやご家族だけでない人たちにも広く理解してもらう必要があるのかなと思っています。
石綿労災問題は早い対応を心掛ける
実際に何を相談したか。労災手続きを完全にやっている方が3人。労災保険、石綿救済制度のご相談と、自宅で生活ができなくなってきたのでどこか病院に入院できないかというご相談がありました。在宅生活には介護保険サービスを使うこと、訪問看護や訪問診療サービスを使うことについてのご相談。様々な労災や石綿救済制度以外の制度の活用についてでした。
労災の決定まではかなり時間がかかります。そのため病院内での役割として、早い段階で診断から相談に繋がって患者さんやご家族と相談していくことが求められます。中皮腫でも石綿肺、びまん性胸膜肥厚で私たちに繋がらないケースもあると思います。石綿に関係する制度のことだけでなく、生活・介護に関係する様々なご相談が潜在的にあり、石綿関連疾患では幅広い対応が必要になるので、ソーシャルワーカーはしっかりやっていく必要があると、昨年度の相談状況から分析しています。
実際のケースで難しいなと思うことは例えば、びまん性胸膜肥厚で労災認定され、その後、肺がんも発病されたのですが、肺がんは労災と認められず、しかも亡くなられた後に労災不支給が決定されたので、そこからの手続きがすごい大変だったという憶えがあります。こういった制度の問題だったり労災認定までに時間がかかるという問題があります。
労災保険制度は、やはり大きい。療養費も休業補償もされるので労災が取れるのであれば取りたい。労災保険が認められた時には、がんばって出来たねという話をした憶えがあります。
一方で石綿肺や良性石綿胸水では、私たちに繋がっても申請しない、石綿救済制度、労災保険の関係する場合があっても、申請しない場合があります。もういいよ、面倒くさい手続きはしたくないと申請しない場合もあります。いろいろ評価が分かれると思いますが、実際に患者さんや家族にとっては、もういいと言う方もいらっしゃるという事をお伝えしておきます。
労災保険や石綿救済制度の今後の課題
最近、仕事上の石綿ばく露が考えられないケースが、昔に比べて多くなってきていると思います。10年前に同じような年間統計をとった時と比べると、中皮腫については約10倍ぐらい相談が来ています。最近は石綿の環境ばく露の患者さんに出会うことが多い。労災ではなく石綿救済制度しかないので、こういう方々の相談をどうするかが課題になっています。
労災保険や石綿救済制度の問題としては、労災申請中に他の医療機関に入院させてくださいとか、訪問診療、訪問看護を受けさせてくださいとなっても、労災申請中は受け入れられないというところもあります。私たち側からすると、ひどいと思いますが、労災申請中は診れません、医療費を全額払って下さいと言われることがあります。この辺は制度の不備と言っていかなければいけない問題なのかなと思っています。
こんなことをやっている医療ソーシャルワーカーという職種が医療機関におりますので、「活用すべきだ」とか「活用しなければいけない」とまでは言いませんが、何か役に立つことがありそう、ちょっと使ってみよう、相談してみようということがあれば、ぜひお声かけいただければと思います。ご静聴ありがとうございました。