被ばく労働交渉(18回目)

 12月18日、全国労働安全衛生センター連絡会議が反原発市民団体などと共に行っている、東京電力福島第一原発事故の被ばく労働問題に関する省庁交渉が行われた。11年の事故以来、18回目となる。要求項目は多岐にわたるが、ここでは労災隠し、労働時間などに絞ってやりとりを報告する。【川本】

1 労災隠しについて

 東京電力は毎年度ごとに、「作業災害一覧表」という形で不休災害も含めて、月日、災害概要、種類、傷害程度を集約してホームページにも掲載している。一方で労災事故を起こした事業主は、休業災害については死傷病報告書を労働基準監督署に提出する義務がある。さらに被災者は労働基準監督署に労災保険請求をして給付を受ける。この3つの数字にズレがあることが以前から問題になっていた。要求は、情報を一番把握している厚労省が責任をもって照合を図り、労災隠しを許さないことに尽きる。
 厚労省の回答では、17年度の業務上災害及び疾病の労災補償状況について、26件の請求があり、14件が支給されたという。ところが、上記の同年度の東京電力の上記「作業災害一覧表」では17件。17件の中には病院に行かなかったものもあるかもしれないのに、逆に請求が9件も多いのはどういうことか? 労災保険請求は治療しなければあり得ないので、事故当日であれ後日であれ病院で治療したにも関わらず、東京電力に報告していない労働災害が複数あることが想像できる。職業性疾病の場合は珍しいことではない。だからこそきちんとした照合と分析が必要だと訴えた。
 残念ながら回答した担当者は上記のこと自体がよく理解できない様子。後日提供された資料によると、26件中、負傷の請求が15件、業務上疾病の請求が11件に上る。厚生労働省の説明によると、一般的には業務上疾病の8割が負傷に起因する疾病で、その9割が災害性腰痛とのこと。東電の作業災害一覧表では腰痛の事例が全くない。16年11月によこはまシティユニオンが東電に、数千人が働く現場で1件も腰痛がないのはおかしいと指摘し調査を求めたところ、東電は「これまで福島第一原子力発電所において腰痛災害の発生は報告されておりません」と開き直った。国と東電双方に対し、徹底追及が必要だ。

2 名ばかり請負人化を許さない!

 労働者の社会保険や労働保険の加入状況を調査するよう求めたが、国の回答は、東電が元請に調査を依頼し確認したところ労働者は100%加入しているという。しかし建設現場で最近、実態は労働者であるのに一人親方など請負人として契約を強いられている例が見うけられる。国の指導が進む中で、社会保険の事業主負担分の支払いを避けるための脱法行為だ。
 実際、国や東電は作業員総数は把握しているものの、そのうち協力会社の社長や個人請負業者の数は把握していないようだ。再回答を求めていく。

3 原発までの移動時間は労働時間だ!

 福島第一原発で働く労働者は、現場から遠く離れた会社に集まってから登録された車で現地に向かわなければならない。当然それは業務の一環だ。ところが多くの会社の始終業時刻や賃金はあいまいだ。先日、過労死で労災認定された猪狩さん(12頁)も午前4時半にいわき市の事業所に出社し社用車で福島第一原発に行き、車両整備の仕事に従事した後、再び事業所に戻って勤務してから帰宅していた。
 要求は全ての労働者について、移動時間が労働時間として扱われているのかを調査すべきだというもの。ところが厚生労働省は、一般的な労働時間把握の必要性を述べるばかりで、何かあれば情報提供してもらいたいという受け身の姿勢に終始。何人の労働者が長時間労働で過労死しなければならないのか!怒りの声があがった。

4 最大被ばく線量を浴びる作業は秘密?!

 東電は毎月、外部被ばく線量を集計して最大被ばく線量を公表している。最も気になるのは一体どういう作業で被ばくを余儀なくされたのかである。なるべく被ばくを少なくするのが東電や国の責務なのだから。ところが東京電力は、作業内容を把握しているにもかかわらず個人情報保護の観点から公表できないとし、厚労省は把握していないという。今回の交渉から東電担当者が参加していたので更に質問すると、いつもではないが国に尋ねられればその都度答えてきたという。ところが厚労省は、作業内容の把握より線量管理が第一だと考えるという的外れな回答。どのような作業で被ばくが多いのかを確かめもしないで、被ばくの低減化ができるはずがない。やる気のなさ、東電任せの姿勢は許されない。
 
5 交渉を重ねよう!

 国の姿勢は、事故直後の緊張感が薄れ、後退している。今後も東電も含めきちんと要請、交渉を重ねていかねばならない。