福島第一原発事故の収束作業 被ばく労働だけじゃない! 過労死も発生!
東京電力福島第一原発で11年の事故後に自動車整備作業に従事していた猪狩忠昭さん(当時57歳)が、17年10月26日に敷地内で倒れ、致死性不整脈で死亡した。ご遺族が長時間労働による過労死だとして労災請求していたが、18年10月16日にいわき労働基準監督署が労災認定した。(ちなみに10月26日は日本で初めて原子力発電に成功した「原子力の日」。以前から反原発を訴える人たちが、反原子力の日として集会などを行ってきた。)
猪狩さんは、いわき市にある自動車レンタル・整備会社「いわきオール」の整備士で、12年3月から福島第一原発敷地内の車両の点検と整備を担当していた。車両は全て放射性物質で汚染されており敷地の外に運び出すことができないため、現場で点検や整備作業をせざるを得ない。猪狩さんは、朝4時半頃いわき市の会社に出社し、同僚と一緒に福島第一原発に向かい作業を行い、夕方会社に戻ってきて午後6時頃まで仕事をしていた。
なんと東京電力は、猪狩さんが倒れて亡くなった直後に、「作業とは関係ない」と発表していた。葬儀に訪れた東電関係者からは、ご遺族にお悔やみの言葉もなかったそうだ。労災認定について、いわきオールは、「健康や労務管理は適切で、長時間労働で認定されたなら当社の認識と違い、誠に遺憾」とコメントしている。現場までの移動時間や原発内での待機時間は労働時間ではないという考え方のようだ。
実は、東電の熱中症対策の指導もあり、労働者は作業前に会社で血圧や体温を測定している。猪狩さんは、亡くなる3日前から血圧が160を超えていたことがわかった。なぜそんな状態で働かなければならなかったのか。東電は、18年9月末までに、登録された敷地内専用の1112台全ての整備を終えるという作業工程を指示していた。他の作業員によると、「工程は絶対で、何があっても間に合わせろと急かされる」とのこと。猪狩さんは技術力が評価され、部下からも慕われていたという。
ご遺族は、「夫と同じような人は二度と出さないでほしい」と語り、会社の責任も追求していく予定。当センターも被ばく労働を考えるネットワークと共に、微力ながら支援していきたい。 【川本】