センターを支える人々:工藤祥子(神奈川過労死等を考える家族の会代表)

■結成3年目を迎えて

17年5月25日に発足した神奈川過労死等を考える家族の会もこの5月で無事3年目に入りました。
結成当時約5名で出発した会も16名の会員となり、会員が増えることの悲しさとともに、分かち合える会にたどり着いて共に歩める事が出来る嬉しさも感じております。この2年間多くの方々や団体の皆様に支えられ3年目を迎えられたことに心より感謝しております。

■分かち合いの場として

会の活動としては、まず正会員である遺族、被災者の分かち合いの場としての交流会を大切にしています。私たち遺族はある日突然このような悲しみに遭ってしまい、どうしたらよいのか全く分からない不安でいっぱいの一個人でした。そんな中で色々なご縁を通して同じ経験をした仲間と出会い、同じ経験をしたからこそ分かり合える話を存分にし、明日からまた生きていこう、頑張ろうという気持ちがだんだんと芽生えてきました。この1~2年間でも最初出逢った時とは違う明るい表情、広くなった行動をみると大変励まされます。

ただ悲しいことに、会の始まりは働き盛りの配偶者を亡くした遺族が多かったのが、だんだん若いお子様を亡くされた親御さんが増え、最近は、小さなお子さんを遺して亡くなった若いお父さんが増えています。これは神奈川に限らず会全体に言えることですが、若年層の働く環境についてこのままではいけないと強く感じているところです。

■学校での啓発授業

厚生労働省の委託事業として過労死弁護団と共に、中学校から大学生の生徒・学生にワークルールについての啓発授業を行っています。遺族としての悲しみを話すだけではなく、このような悲しみを産まないためにはどうしたらよいかという事をワークショップで考えたり、相談機関や労働者の権利などについてのお話を重視するよう大学の先生や弁護団とも教材研究を続けて来ました。昨年度はリピーターも含め10コマ以上の授業を行えたことも大きな成果です。

■シンポジウムの開催

毎年11月に行われる「過労死等防止対策推進シンポジウム」は、昨年で4回目を迎えました。春より、神奈川労働局さんのご意見を頂きながら家族の会、弁護団、各団体の皆様と会議を重ね計画を練って参りました。

企業関係者の参加者が多い神奈川では、真の過労死防止を進めるためには労使共に、超党派で取り組むことが大切であると、何度も使用者側への理解を求めたり、組合の皆様にも広くお話しさせて頂き、昨年度は全国でも稀な、行政、遺族、労使、弁護士が超党派で協力団体に加わって頂くという大変ありがたく嬉しい状況の中で、沢山の参加者を賜り、盛況の中でシンポジウムを行うことが出来ました。協力団体に加わって頂くにあたり、「過労死防止という点では同じ志」であるとご参加いただきました多くの立場の皆様に心からの感謝の気持ちでいっぱいです。

■「過労死防止法」の成立

5年前、過労死等防止対策推進法の成立にあたっては、超党派の議員連盟のお声掛けで国会で全会一致で可決いたしました。本来、命の問題は国全体の問題として率先して解決するべき問題と考えます。神奈川でも当初よりそのような考えのもと、家族の会、弁護団とともに各団体の皆様が加わり進めて参りました。

昨年度はそのひとつの大きな成果の中シンポジウムが行えましたことは、大変励みとなりました。今年度も5月の家族の会の総会の前からシンポジウムに向けての準備を進めております。昨年度ご協力いただいたご縁を大切に、更に充実させるための取り組みをと進めております。

■センター設立を目指して

労働に関係する全ての皆様が関わり過労死ゼロを目指す「全国過労死防止センター」の神奈川センターの発足を目指して、多くの話し合いを進めているところです。持続可能で有意義なセンターを発足させるために、少々時間は掛かりますがしっかりと地固めをして、数年以内にはスタート出来るように致したいと進めておりますので、皆々様にもご協力いただけますようお願い申し上げます。

■元教師として

私自身もこの2年間で活動がずいぶん変わりました。私は教師の遺族であり元教師でもあります。現在、教師の働き方についての記事が頻繁に報道に出るようになりましたが、私が被災した約10年前は、非難こそあってもこの問題が議論されることはありませんでした。

ちょうど家族の会発足と時を同じくしてSNS上で先生方の部活問題の議論が活発化したことを皮切りに、教師の働き方について世の中でも注目を集めるようになり、私も多くのところで取材をして頂いたり講演をさせて頂く機会を頂きました。

教師は、給特法という50年も前に出来た、簡単に言えば残業命令出来ない、残業代なしという法律に縛られており、教師のやりがい搾取の無償で無制限な長時間労働、勤務管理のない現場、時代とともに増え続ける業務量と減り続ける教師の数の中で、無法地帯と化してしまいました。それが教育現場でどのような弊害が出るのか、教育現場で教師が死んでしまう姿を見せても良いのかを訴えてきました。

50年前に出来、今まで変われなかったことがすぐに変わるとは思いませんが、遺族である私、そして教育に関わる各方面の専門家の方がそれぞれの場所で声を上げ、その声がだんだんと一つになりこの2年で結集したと感じております。その声は確実に教育行政を変えつつあると考えています。

昨年12月には厚生労働省の過労死等防止対策推進協議会委員を拝命しました。教師の問題、公務職場、公務災害の問題を中心に過労死ゼロに向けて訴えていきたいと思います。

3年目に入り、未熟な点も反省も多いですが、是非、皆様にご指導いただきながら一緒に活動をさせて頂けたらと思っております。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。