2109年度:労働基準監督署交渉(神奈川12署)

川崎南労基署

 労災が19・8%増加。陸上貨物、道路貨物運送が多く、2割以上を占める。製造業と並び、倉庫が並んでいる関係で運送作業の絶対量が多い。アスベスト工事はプラントの配管工事がほとんどであり、業者も経験を積んでいるところが多い。
建設・製造現場では高齢者が増えている。例えば、熱中症死亡の4人のうち3人が60代以上。一方で、案外若く経験のない人も多い。
労働相談では、実は東京の事業場の相談が多い。必ずしも正確ではないが2~3割ぐらい。

鶴見労基署

 例年のことだが、全国、局、そして鶴見署の労働災害の現状についてグラフや図入りの資料をまとめたもので解説。それには4日未満の労働災害発生状況を年代、業種、事故の型、事業規模、起因物別のグラフもある。労災発生件数は横ばい状態である。
労働相談では他と同様に賃金不払いが多いのだが、賃金不払による当然の最低賃金法違反ではなくて、支払っている賃金が最低賃金を下回っているという、「純粋な」最低賃金法違反が多い。小売業など第三次産業で目立つ。順法意識の向上に尽きるので、管轄が地理的に狭いこともあり、とにかくしっかり監督に回るようにしている。

横須賀労基署

 労働災害が増加している。労働相談も賃金不払いなどの「不景気型」が多いような印象を受けるとのこと。
ユニオンヨコスカ組合員、じん肺・アスベスト疾患患者さんやご遺族など参加者が一番多い。いくつかの意見を紹介する。
・メンタル労災はきちんと調査してほしい。特に、いじめや嫌がらせはなかなか認定されない。時間もかかるのは理解できるが、被災者は本当に困っている。
・働き方改革の掛け声はいいが、労働組合敵視を続ける神奈川歯科大は、病院で仕事が残っていたら、5時にタイムカードを押してから働くようになどという紙を張り出したことがあった。さすがにそれはおかしいという声があがって剥がされた。
・団体交渉で労基署が違法ではないと言ったことを盾にする会社がある。
・じん肺で長年療養しているのに傷病補償年金に移行しないのはおかしい。人数を明らかにしないのはなぜなのか。

相模原労基署

 労災も労働相談件数も増えている。相談件数の増加率が局全体の平均よりも高いのは相談員が増えたことが要因かもしれない。道路貨物運送や社会福祉施設は絶対数が増えているとはいえ労災も多い。トラック運転手の長時間労働対策は、猶予期間があるとはいえ、なかなか取り組みが遅いと感じる。
建設労働者から、腰痛の労災請求が少ないのは、医療機関、会社などから腰痛は労災にならないと言われて請求しないことが多いという意見が出された。アスベストは学校関係の工事が多いと言う事でしばらく続くようなので自治体とも連携して対策を取ってほしいと要請。アスベスト肺がんの労災について行政訴訟係争中で、国の主張が変遷しているので自庁取り消しも検討してもらいたい。

横浜北労基署

 労災が増加している。今年も半年経過したが昨年と同じような件数である。卸売、小売業、派遣業の占める割合が大きいのが特長。休業4日未満の労災について業種ごとや内容を分析。例えば4日以上は多い順に「転倒」「動作の反動・無理な動作」「墜落・転落」と続くが、4日未満は、「高温・低温の物との接触」がトップで、「転倒」「動作の反動・無理な動作」と続く。

藤沢労基署

 様々な業種で押しなべて労災が増加。小売業の転倒、社会福祉施設の腰痛、飲食店のやけどなど、各業種ごとに円グラフでわかりやすく解説。転倒災害の分析をしたところ、長期休業もあることがわかる。精神障害の労災請求が今年度も多い。

横浜西労基署

 労災の総件数は減少したが死亡災害はゼロにならない。一昨年は2件、昨年は4件。全体が減ったのは建設業が100件から69件と3割減ったことが大きいが、小売業は75件から95件に増加。交通事故災害も多く、局全体では約7%なのに、11%を占める。運輸交通業を重点的に指導している。
4日未満の休業災害の提出は以前よりは増えたと思う。熱中症の不休災害は多いと感じている。
商業や接客娯楽業は一つ一つ回るのではなく、呼び出して集団指導を実施した。社会福祉関係も新規増加傾向が続き労務管理が追い付いていない。

小田原労基署

 製造業で多くを占める食料品製造業で労災が増加。建設死亡災害が2件も発生。木造家屋の新築工事の墜落災害。旅館業を臨検監督して目立つのはやはり労働時間と健康診断の未実施。年次有給休暇の相談も多い。アスベスト除去工事業者は、案外新規業者も多いので、きちんと指導している。

横浜南労基署

 労災が増加傾向で小売業やサービス業での転倒災害が多い。転倒防止は難しいが、無理をせず台車や手すりを使うなど労使の関心を高めることが重要。経験1年未満の労働者が2割を占めるので雇い入れ時教育の徹底を図る。仕事量が増えると労災が増えることもあるが、建設業では工事量の増加を上回る率で労災が増加。やはり人手不足で熟練労働者が減ったと言う声も多い。

平塚労基署

 労災が536件と大幅に増加。10年ぶりに500件を超え、前年比103件、23・8%増は数も率も神奈川局ワースト1。原因についてさまざまな視点から分析を試みたが正直わからない。みなさんの意見もお聞きしたい。もちろん発生現場には積極的にでかけて監督し運輸関係の荷主をはじめとする発注者への指導も行っている。自治体の首長にも働きかけを始めた。パトロールでは危険な点や違反を指摘するのではなくて、好事例を積極的に紹介するようにしている。
労災隠しを防ぐために、療養補償の請求書は全て目を通して、重傷なのに休業の請求がないようなものについてはかならず確認するようにしている。

川崎北労基署

 労働災害はほぼ横ばい状態だが、業務上疾病は増加傾向。社会福祉の事業場が、この5年ほどの間に800から1200事業所に増え転倒や腰痛が多い。川崎市と連携して対策を進めている。昨年との比較で最も増加したのは運輸交通業。高齢者の労災対策が話題となったが、たまたま死亡災害は全て60歳前後の労働者である。

厚木労基署

 ほとんどの監督署で労災が増加する中、一昨年までは減らなかったにも関わらず5%の減少を実現。物流拠点とそれに伴う食料品製造業が増加しているため相模原署と連係して対策を講じた。道路貨物運送業では荷主への指導を強化。社会福祉業の腰痛対策としては、ロボットスーツなどの新しい技術を開発メーカーとも協力して導入した。食料品製造業は大きな事業場がいくつもあるので、好事例を周知するような形で安全衛生活動を展開した。
建設業の働き方改革、長時間労働対策は、無理な工期の設定が根本的な課題としてある。綾瀬市の災害比率が多いので重点的に取り組みたい。