2019年度:神奈川労働局交渉

放射線被ばく労働者の特殊健康診断の有所見者率はなぜ高いのか?

労働局からいろいろな資料が提供された。ホームページにも公表されている健康診断の結果で気になる点がある。電離放射線の特殊健康診断の有所見者率が2011年以降、増加しているのだ。全国の数字でも少しずつ増加はしているが神奈川ほどではない。例えば、17年は全国8・7%、神奈川11・38%。09年は全国5・7%、神奈川の方が低くて5・61%だった。局の説明では、そもそも受診者のほとんどが医療関係者で、あくまでも印象としながらも医師の労働条件が悪化しているからではないかと説明。ちなみに東京労働局ではこのような形では公表されていない。9月には、被ばく労働に関する本省との交渉を予定しているので、福島局や他局の数字も明らかにさせて分析してみる必要がある。

四日未満の休業災害

日本の労災発生件数は何件ですかといっても、実は正確に答えることはできない。特に、安全ないし衛生の部署では、休業が必要ではなかった災害は全く把握しておらず、休業4日以上の災害を労働基準監督署に報告することが義務づけられている、死傷病報告書をもとに全てが語られている。一応、4日未満のものも簡単な書式で年4回の報告が義務づけられているが、知らない会社も少なくない。労災事故などで立ち入り調査でも受けない限り、まず催促されることもない。

数年前に要求した当初は、「統計を取っていない」とか、「数が少ないので分析する意味がない」などと回答されてきたが、少しずつ改善し、ようやく局全体でも数字が出されるようになった。いくつかの署で明らかな通り、熱中症や火傷が多いことは明白。1000件を超えているもののさらに詳しい分析が、意味がないとは考えられない。きちんと分析させることが来年からの課題だ。

医療機関への働きかけ

医師が上肢障害や非災害性腰痛の労災認定基準を知らないことから、仕事が原因であるにも関わらず労災請求自体が少ない。労災の証明を医療機関に依頼すると大病院では3週間ほど待たされることも多い。これらを改善するよう監督署に要請していたが、局から、毎年8月に指定医療機関向け研修会があるのでそこできちんと説明、依頼するとの回答であった。手続きがスムーズに進むようになることを期待したい。

なお、上肢障害(頚肩腕障がいなど)の請求、上外の決定件数のばらつきも気になる。大きな署(横浜北や横浜南)での件数があまりにも少ない。

精神疾患の調査

長時間労働による精神疾患については、労働時間が明らかになれば認定されることがほとんどである。ところが退職強要やいじめ・いやがらせの場合は、その評価を客観的に行うことが難しいために、大したことなかったということで不支給になることが多い。交渉に参加した神奈川シティユニオンの組合員の事例で、ハラスメントの行為者は左遷され、会社も治療中の組合員にいろいろな配慮をしているのにもかかわらず、不支給になったと報告された。

もう一つの問題は、神奈川労働局では精神疾患の労災請求を処理する際に、局に特別な「班」を作っていること。8人の職員が属しているという。もちろんここで専門的に全てを調査して適切に給付のであればよいのだが、一部の署の件については、会社からの基本的な資料収集や本人聴取までを署で行い、その後の会社関係者の聴取や復命書の作成まで、局の班で行うという。これには批判の声が強くあがった。可能な限り書証を収集する裁判所ですら、最後は原告側と被告側の話を聞いて、なにがどこまで信用できるのか、わからないのかなどを整理し、事実認定、評価した上で判決に至るのだ。

上記のようなパワーハラスメントなどはとくに請求人と加害者や会社側との言い分が異なることが多い。やはり1人の担当者が責任を持って双方の調査をするからこそ、適切に判断できるはずだ。

局としては、今もどのようにすれば効率的に業務が進むのか「業務効率化のワークチーム」において検討中なので、問題があると考えれば改善するという。

脳・心臓疾患の認定率があまりにも低い

脳心臓疾患について、昨年度は56件決定されたが、業務上は5件。認定率わずか8・9%である。全国の認定率34・5%の約4分の1という低さ。昨年までも全国平均を大きく下回っていたが、それでも26・9%だった。

なぜこんなに低いのかという質問に対して、局は、不支給決定された51件を調べてみたところ、月の残業時間が脳心臓疾患が起き得るとされる45時間を下回るものが40件もあるという。しかし、それは調査結果に過ぎないのであり、全ての請求人が45時間以下(日に1時間半時間程度の残業)だと考えて請求したとは思えない。仮にそうだとすれば、いきなり昨年度になってそういう人が増えたのか。理解に苦しむ。

最低賃金審議会の公開を

関心が高まっている最低賃金制度で大きな問題の一つが審議会の非公開。きちんとした議事録すら作られてこなかった。資料はホームページに載せるようにしているが、議事録については、職員が文字おこしをしたものを早急にホームページに載せると回答した。外部に依頼すると費用がかかるというが、率直に言って、業務効率化に反している。