全国一斉職場のいじめパワハラほっとライン 東京・名古屋・神戸で実施-2日間で相談73件

9/7~8 全国一斉 職場のいじめパワハラほっとライン
東京・名古屋・神戸で実施 2日間で相談73件
西山和宏(ひょうご労働安全衛生センター)

9月10日はWHOが定めた「自殺予防デー」です。日本でも9月10日~16日は自殺予防週間と定められています。当センターに寄せられる相談のうち、職場のいじめパワハラに関する相談は増加傾向で、自殺につながる相談も増えてきています。また、全国的にも過重労働が原因で脳・心臓疾患を発症する事例や自殺につながる事案も増えています。

自殺予防のために「負の連鎖」を断ち切る一つの手段として、職場でのいじめ・パワハラに悩んでおられる方々の相談を受けるホットラインを、9月7日(土)~8日(日)の2日間、開設しました。今回のホットラインは全国労働安全衛生センター連絡会議メンタルヘルス・パワーハラスメント対策局の主催で、個人加盟の労働組合であるコミュニティー・ユニオン全国ネットワークのメンバーに協力して頂きました。

相談受付ポイントは、東京・名古屋・神戸の3ヵ所でした。神戸の相談対応には、ひょうごユニオンとNPO法人ひょうご働く人の相談室の協力を得ました。相談件数は、東京11件、名古屋8件、神戸54件(事前の2件を含む)で合計73件。神戸の相談番号がマスコミで取り上げられたこともあり、2日間以降も10件相談(9月21日まで)があり、現在も続いています。

相談者の傾向

相談者は、本人からが66件、母親・妻・兄妹からが7件。相談者の性別は、男性32名、女性49名、不明(記載なし)2名。例年は女性からの相談が圧倒的に多い傾向があります。今回も女性からの相談が多かったのですが、例年ほどの大きな違いはありませんでした。
相談者の年代は、20歳代5名、30歳代12名、40歳代12名、50歳代16名、60歳代9名、不明(記載なし)29名で年代による偏りはありませんでした。

相談者の雇用形態は、正社員35名、非正規雇用14名、その他(無職等)6名、不明(記載なし)28名。職種としては医療関係、介護関係、学校関係(保育所・幼稚園を含む)、事務職からの相談が多いことが特徴的でした。

相談内容

今回の相談内容を、厚生労働省が2012年3月15日に発表した「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」の「類型」に当てはめたところ、次のような件数となりました。
身体的な攻撃・・・6件
精神的な攻撃・・・54件
人間関係からの切り離し15件
過大な要求・・・・5件
過小な要求・・・・3件
個の侵害・・・・・1件
その他・・・・・・17件
*相談内容が行為類型の複数に該当する場合は、複数にカウント
*その他は、主訴が上記の類型に非該当

類型別の代表的な相談内容

1、身体的な攻撃

(1)上司から自分だけに八つ当たりのように暴力を振るわれる。脅迫的な言動も。録音しようと思ったが、ボイスレコーダーを没収された。ミスをした際に、腕立て伏せなどの罰ゲームをさせられる。

(2)「殺すぞ」と言われ、暴力を振るわれてきた。

2、精神的な攻撃

(1)仕事のミスがある度に、他の従業員の前で攻撃的な口調で怒鳴りつけられた。「いつ辞めてもいい」との発言があった。他の従業員に無視するような指示を出していた。体調が悪く休むと、違う理由で休んでいるように噂を流された。

(2)10か月前に就職したが、毎日のように怒鳴られる。小さなことを取り上げて大声を上げて、「殺すぞ」等と言われ、こつかれたこともある。その上司に「辞めろ」と言われ、会社に行っていない。

(3)保険会社の窓口の仕事。指導係の言葉がきつい。つきはなす言い方で、「おそい、おそい」「何でこんなに遅いかな」「何回言わせるの」と言われる。他の職員の対応もきつくなり、「あなたは人をいらいらさせる。前の職場でも人間関係のトラブルで辞めたんでしょう」「早く居なくなんないかな」「アホだから電話取るしかできねーや」と言われる。

(4)50歳の女性係長からターゲットにされパワハラが続いている。人事課相談窓口に相談したところ、言葉によるパワハラは減ったが、睨みつける、威嚇するなどに変わった。

(5)パンの製造ラインで、課長が私を皆の前で叱りつける。私が悪くなくても不良品がでると全て私の責任にされる。皆の前で怒られるのが一番辛い。

(6)上司から会議中に、「お前は気に入らん」「仕事が遅い」「時間がかかっている割に成果がない」「能力がない。改善が見られない」ときつく言われる。社員の目の前で叱責されてことがある。

(7)ミスを全て私の責任にされ、職場に言いふらされ、挨拶しても無視される。1年続いている。「これをやれない人は馬鹿だ」と皆の前で言いふらす。

(8)7月から働き始めた。1日指導を受けたが、教えてもらっていないこともあるのに、課長は「仕事ができない」「3回目やけど」などと言われる。

(9)非常勤のヘルパーとして9ヶ月勤務。リーダーが私にだけトイレ掃除を押し付ける。仕事を外したり、10分休憩の指示をくれず休憩が取れない。

(10)1対1の時に副園長が私の仕事を批判する。矛盾した指示をする。私ににだけ挨拶を一切せず、無視する。園長に相談しても関わってもらえない。

(11)マニュアルがなく、すべて口頭指示で内容が一定しない。女性主任から何度も「ばーか」と言われ、部長から「君の指導に疲れた。別の部署に行ってくれ」と言われた。

(12)自身の顔にコンプレックスがあり、入社前より濃い化粧をしていた。採用時面接で「濃い化粧でもOK」と言われ入社したが、「化粧が濃いので薄くしろ」と再三注意され、上司から「就業規則で濃い化粧は認められてない」と念書をとられた。

(13)介護施設のケアマネ。所長が大声で罵倒し、攻める。所長には誰も意見を言えず、私と次に古い2人が意見を言っていた。8月末にデイへの異動を通知され、嫌なら辞めろと言われた。もう一人も往復5時間かかる施設への異動を通知された。

3、隔離・仲間外し・無視

(1)会社で横領事件があり、業務の改善を申し入れたが無視され、退職した。離職票に職場環境が悪い旨を書いたが、勝手に修正させられた。

(2)仕事中に人身事故を起こし、無期限の乗車停止処分を受けた。その時の社長の説明は、「給料のことでごちゃごちゃ言うたやろ」。人身事故を起こしたことに対する度を超えた嫌がらせと思う。

(3)10年間で賃金が6万円下がった。この1年でも2万2千円下がった。上司は私を煙たがり、窓際に追いやった。職場で机をひっくり返すなど暴力的な対応もあった。

(4)広報担当として別の事業場に行かされ、引っ越したところ、自分の机が無くなった。その後も、周りとの関係を理由に出向させられた。

4、過大な要求

(1)夫について相談。勤務は8時~17時だが毎日残業で、早くて22時、遅いと午前1時まで働く。職場の雰囲気もあって帰れない。有休も使えない。上司から電話があると、声が漏れるぐらい強く言われているのがわかる。

(2)業務過多で入社3ヶ月で適応障害に。休職1年。当時、残業は月40時間位。

5、過小な要求

トラックの荷台から落下し両手骨折。労災になったが、復帰後に違う仕事をさせられている。日当が1万円から7千円に下がり、辞めさせられそう。

6、個の侵害

面接時に「彼氏はいるか」と聞かれ、居るというと、「結婚しないのか」と聞かれた。仕事の流れで上司に意見したところ、「そんなことわかっている」と強く言われた。これをきっかけに、関西弁がきついと言われ、雑談には入れてもらえない。

パワハラの概念で収まらない相談

職場のパワーハラスメントの防止を企業に義務付ける労働施策総合推進法が成立しましたが、その定義は「職場における優越的な関係に基づき、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、労働者の就業環境を害すること」とされています。

今回のホットラインに寄せられた多くの相談の中には、上記のパワハラの概念に収まらない、同僚や部下からのハラスメントに悩む内容も含まれていました。

(1)5年前に入社以来、同僚から激しい叱責を受けてきた。私がする仕事が10のうち1でも出来ていなければ徹底的に言われる。辞めろと言っている。

(2)上司が無表情で、相談しても「何ですか」「そんなこと聞いても」という対応しかしない。7月に機械トラブルがあったが上司に報告しなかった。後で上司がトラブルを知り顛末書の提出を命じられて出したが、部下からの報告と違うと言われ再提出を求められ、「君は信頼できない」と言われた。

(3)昨年4月に園長に誘われ副園長として保育所に入園。今年度から園長になって欲しいと言われた。元から居た主任は自分が次の園長になると思っていたようで私に対して対応が厳しい。前の席に座っているが目を合わせない。周囲に私の悪口を言い、最近は話もしない。

(4)同じ職場で以前は仲の良かった友人と最近、仲が悪くなった。友人は仕事が出来るが、自分はあまりできない。言うことを聞かなければ今以上に仲が悪くなってしまう。どうしたら良いか?

(5)最初の勤務先で従業員から嫌われ4ヶ月で別店舗に。その店舗でも部下から嫌われ、すぐに怒鳴られる。35年のキャリアがあるので、現在いる従業員を早くどこかにうっちゃって欲しい。

(6)他の従業員の不正を報告したところ、その人は会社からけん責の処分を受けた。これを契機に、仲が悪くなった。こちらからも口をきかない。会社に相談したら、自分たちで解決しろと言われた。

(7)3人職場の課に新人が配属された。前から居る2人が新人を一切指導しない。仕事に差しさわりが出て困るし、仕事が回らなくなって困る。

(8)自分の部署にはコミュニケーションを取りにくい人ばかり配置してくる。仕事のやり方を監視していてマニュアルを検索し、数日経ってから「間違っている」と指摘し、幹部に通知をする。幹部からは「役職としてふさわしくない」と言われている。

また、「上司に、何かにつけて前任者と比較され、他部署とも比較される。自分が責任を持つと言いながら、こちらに作業を押し付けるフォローが乏しい。自信を喪失し、不安感が強くなり、これから仕事を継続していく事に自信がもてなくなった」という相談もありました。

職場環境の改善に向けた取り組みを

2012年に厚労省が発表した「提言」では、「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」とされていました。労働施策総合推進法では「人間関係などの職場の優位性」「精神的苦痛」が消えたためパワーハラスメントの定義が狭くなり、前述した相談はパワハラの概念には収まらなくなります。

本年採択されたILO条約の暴力とハラスメントに関する定義は、「仕事の世界における『暴力とハラスメント』とは、単発的事象か繰り返されるかにかかわらず、身体的、精神的、性的または経済的危害を目的とした、または危害を引き起こし若しくは危害を引き起こす可能性のある、一定の許容できない行為及び慣行またはその脅威をいい、ジェンダーに基づく暴力及びハラスメントを含む」とされています。精神的あるいは肉体的な影響を与える言動や長時間労働・過重労働によって、人格や尊厳を害し、労働条件を悪化させ、労働環境を害する目的や行為はハラスメントです。これらは行為者個人の問題ではなく、企業体質・構造上から生み出されている問題なのです。

厚労省の調査によると、「過去3年間にパワーハラスメントを受けたと感じた者におけるその後の行動」は、「人事等の社内の担当部署(相談窓口を除く)に相談した」9・7%、「社内の相談窓口に相談した」8・6%、「会社が設置している社外の相談窓口に相談した」3・6%でした。「労働組合に相談した」3・5%、「何もしなかった」が圧倒的に多く41・8%という状況です。

「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は全国で7万件を超える(厚労省発表)状況の中で、社内はもちろんとして相談窓口の充実が求められています。合わせて、ハラスメントの根絶に向けた職場環境の改善が、労働組合に問われています。