精神疾患の労災認定について(コミュニティ・ユニオン全国交流集会inひょうご姫路 分科会報告)

10月5~6日に兵庫県姫路市でコミュニティ・ユニオン全国交流集会が開催された。6日の第1分科会は精神疾患の労災認定というテーマで、当センターと関西労働者安全センターのスタッフが労災認定基準の解説や課題、認定状況などを事例に即してお話しした。【川本】

はじめに、当センターの川本が精神疾患の労災認定基準の解説をした。
精神疾患の労災認定は難しいと思われがちであるが、長時間労働が明らかな場合は、比較的労災認定されやすい。ただし、成果物が少なかったり、何をしているのか必ずしもはっきりしない場合や、待機時間についても労働時間としてカウントしない傾向が最近目立つ。厚生労働省が2017(平29)年初めの通達で「労働時間については、明確な指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かによる客観的に定まるものであること」という方針を出したためと考えられる。

実際に何件認定されているかについては、脳・心臓疾患と併せて、毎年6月下旬に発表される。都道府県別の件数や出来事別の件数も発表されるが、地域によって請求数はもちろん、認定率が大きく異なる。労働時間以上に、いじめいやがらせや退職強要などは過小評価されることが多い。労災保険給付担当者は、監督官と異なり、個別労使紛争などに関与することが皆無であるので、労使関係の問題は丁寧に説明する必要がある。

続いて関西労働者安全センターの田島さんが、事例の報告をした。
ゴルフ場の名ばかり役員のケースでは、例えば本人の計算では、症状が悪化する直前の月に245時間というすさまじい長時間労働であった。ところが労働基準監督署は実態を無視し、139時間しか認めなかった。審査請求で追加の意見書や証拠を提出した結果、審査官は212時間と認めて、既往症があった(発症前の労働時間記録が全くないので私病扱い)にもかかわらず、月160時間以上という「特別な出来事」があったとして逆転労災認定された。

銀行員が同僚から胸ぐらをつかまれて揺さぶられたケースでは、「ひどいいじめ・嫌がらせ、暴行を受けた」として、労災認定された。その日のうちに病院を受診し、警察にも相談したこともあり、すみやかに労災認定された。加害者が事実を否定することも多く、医師の診断が事件よりも遅れる場合などは労災認定が医学的なことを理由に認められないこともあるが、きちんと証拠があったので、主治医の意見がそのまま採用された。

派遣労働者の事例では、上司から無視される(あいさつしても全く返ってこない)、威圧的な態度、責任のないことでの叱責といった多くの事例が、ほとんど認められなかった。本人らが悪意を否定し、心理的負荷が大きいという評価につながらなかった。専門家の意見書も提出したが再審査請求も棄却された。

JP労組大阪西分会から、今年3月、29歳の集配職員が局内で自殺したことが報告された。他局でパワハラ事件を起こしたことのある管理者たちに日常的にいじめを受け、配達中の小さな交通事故で激しく叱責されて、その数時間後に安全たすきで首つり自殺したという。分会ではご遺族と相談して労災請求を進めるとともに、集会を開催するなどして会社の責任を追及している。