センターを支える人々:松館寛(NPO法人石綿被害者支援の会)
「松館、アスベストに詳しいと聞いたけど本当か。大工だけど、肺にアスベストを吸った跡があると言われている」。中学の還暦同窓会で突然に話しかけられた。私が東京土建一般労働組合でアスベストなどの職業病対策専従書記として働いていた時のことだ。
また、岩手県宮古市から都内の建設会社に勤めた建設労働者が入所時健康診断で肺に異常が見つかり、石綿肺で労災認定のお手伝いをしたこともあった。アスベストを吸った建設現場は三陸沿岸の建物。故郷の岩手県のアスベスト健康被害者のことが気になった。65歳の完全退職後の生き方を模索していた時です。
退職後の生き方に3つの方向性を見出した。1つ目は何らかの社会貢献。2つ目は仕事と子育てに追われて出来なかったことをしたい。3つ目は自然豊かな所で暮らしたい。
社会貢献と言っても何も「特技」があるわけでは無い。そうだ、仕事で得た知識を社会に還元すればいいんだと考えた。職業病、とりわけアスベスト被害に遭っている人の役に立てれば。組合で働いていた時も、組合を年齢で脱退した組合員や建設業以外でアスベストばく露した一般市民の人たちにも寄り添ってきた過去があった。
1つ目は歴史が好きなので何かやってみたいと。私の故郷の岩手県一戸町に世界遺産登録を目指している御所野縄文公園がある。案内ボランティアの募集を目にしていた。自然だらけの町。私の実家は旧国道4号線沿いにあるが、その500m範囲にも熊が出没するようになった。町役場では農作業の貸農園もある。野菜くらいはできそうだ。足し算していくと、故郷一戸町に夏季の間は住むことにした。
主たる活動地域の岩手県北広域振興局二戸地域振興センター管内(一戸町、二戸市、九戸町、軽米町)では中皮腫などの石綿救済法の申請は3年間で無しとのこと。二戸労働基準監督署(二戸、一戸、九戸、軽米、洋野、久慈、野田、普代の市町村)の受付はこの3年間で2件。県北地方では3年間で2人のみ。まさに地域間格差を象徴している。
NPO法人石綿被害者支援の会とは名は大きいが身体は小さい。相談できるメンバー2人だけ。なにしろ財政基盤が無い。それでも県内の労働組合への働きかけや、新聞報道で広がりは実感している。岩手県のアスベスト対策に関心と強い影響力を持っている、元県立病院の呼吸器専門の院長とも面識ができた。情報の交換と役割分担が期待される。
基本の活動スタイルは夏季は岩手県、青森県など北東北にし、冬季は東京都近辺で事業所退職、組合を年齢で脱退した人たちの相談活動を予定している。足立区の登録団体NPOにも認可された。組織ではなく、ネットワークづくりの一助になれば幸いです。