化学物質過敏症等をめぐって-労災請求、損害賠償裁判、労災認定基準/運用の改正に向けた政治的運動も

化学物質過敏症等をめぐって
 労災請求、損害賠償裁判、労災認定基準/運用の改正に向けた政治的運動も

 化学物質過敏症の相談は後を絶たない。当センターに寄せられるものは、職場環境が原因と考えられるものである。センターもできる限りの支援をしてきたが、残念ながら、ここ10年間については、一定濃度の化学物質ばく露がはっきりしているものについて、その後しばらくの療養補償や休業補償は認められるが、長引いているものは全く認めないか、症状固定として障害補償のみ認めるという決定を乗り越えることができないでいる。

 厚生労働省は、2007年6月に「化学物質に関する個別症例検討会」を設置した。化学物質過敏症で労災請求すると、必ず労働基準監督署は労働局を通じて、この検討会にかけられる。詳しい根拠は個人情報と言う事で全く闇の中。化学物質過敏症は「化学物質を吸引し続け急性期の症状が慢性化したもの、あるいは、化学物質を吸引し続けたことによる遷延化した症状」であるが、遷延化した症状については「未だ医学的な合意が得られていない」という理由で、必ずばく露との因果関係を認めないという意見を出すのだ。

 そこで、被災者が、使用者に対する民事損害賠償裁判を起こし、丁寧な立証ができた場合については、支払いが命じられる認められることもある。しかし、本来被災者が望んでいる治療に専念できる継続した補償というものは実現していない。

 過労死の労災認定基準も数多くの被災者や遺族が、不当な不支給決定の取り消しを求める行政訴訟を闘い、いくつもの判例を積み重ねた結果、ようやく改正されてきた経過がある。同じことを化学物質過敏症の被災者に求めることは極めて難しい。労災請求、民事損害賠償裁判と併せて、政治的な取り組みも必要だ。

 センターでは現在、職場の受動喫煙が原因で化学物質過敏症になった労働者の支援に取り組み始めた。なんとか労災認定を勝ち取るとともに、上記検討会による結論ありきの運用を廃止させていきたい。